ポルシェはテスラのように価格転嫁できるが、低価格車のEV化は不可能
dims
引用:https://i0.wp.com/autogeek.com.ua/wp-content/uploads/2018/02/dims.jpeg



ドイツ自動車業界の憂鬱

ドイツは2017年9月の総選挙で与党が大敗し、6ヶ月の空白期間の後、3月14日にメルケルが首相に指名された。

ドイツ経済は好調だが政治混乱によって経済の失速が懸念されている。

懸念その一はVWのディーゼル排ガス不正に端を発した自動車業界再編で、ディーゼル車が追放されようとしている。


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欧州のほとんどの国では今後数年でディーゼル車が販売されなくなると予想されていて、替わりにEVが売れると予想されている。

だが「昨日までディーゼル、今日からEV」のように都合よく消費者が行動するとは限らない。

日本メーカーの予想では、2030年ごろになってもEVの販売比率は全体の10%に留まる。


EUではディーゼルの販売比率は50%を超えていたので、計算がまったく合わない。

穴埋めを期待されているのはハイブリッド車だが、日本式のHVではなく充電可能なPHVになる。

ディーゼルという安価な稼ぎ頭を失って、高価なPHVで代替できるのかどうか、PHVはエンジン車より値段が高い。


EVもやはり高価であり、テスラのSやXは800万円以上し、リーフのような『大衆車』でも補助金なしで400万円する。

日産の同じ程度のガソリン車は200万円以下なので、EVはガソリン車の2倍になり、これではディーゼル車の替わりにはならない。

ドイツ車は次々にEVやPHVを発表しているが、価格競争力があるのはポルシェのような高級車に限られる。



15年間好景気の国

エコノミストによるとドイツの好景気は15年目で、EU発足からほぼずっと好景気が続いている。

その理由は明白で、ドイツが輸出で稼いだ分を、ギリシャやイタリアや東欧が支払った。

EUはユーロによって固定相場なので、貿易黒字が増えても絶対に「円高」にならないからです。


尽きる事がない金のなる木を持ったようなものだが、それゆえに長すぎた好景気は間違った意識の原因になる。

ギリシャ危機が起きたときメルケル首相は「ギリシャ人は怠け者で、ドイツ人は優秀で勤勉だからこうなって当然」と発言して耳を疑った。

あまりにも恵まれた貿易制度と長すぎた好景気は、ドイツ人を「周囲はバカで自分は優秀」なのだと思い込ませている。


長すぎた安定と成長の後で何が起きるかは、ソ連崩壊やバブル崩壊、リーマンショックなどの例があった。

リーマンショックの前の年、アメリカ人は「我々は優秀な人間だから、もう経済危機は卒業した」と言っていました。

懸念その三はドイツはその成功ゆえにIT化が遅れていることで、経済の大部分を製造業が占めている。


自動車や機械を製造すれば、いくらでもEU域内で売れるので、苦手な分野に挑戦する必要がない。

ドイツが進めているIT技術は、自動運転やEVなど、従来の製造業の延長にすぎない。


ドイツの1人当たりCO2排出量は、日本より少し少ない
だが日本は原発を停止しているので、再稼動すると同じ程度になる
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引用:http://www.jccca.org/chart/img/chart03_02_img01.jpg



クリーン電力の行き詰まり

懸念その四はドイツの最大の成功と喧伝されたクリーン電力が、実際には大失敗に終わろうとしている。

ドイツのCO2削減目標は30年までに55%削減するのだが、達成不可能になっている。

2020年のCO2排出量は40%削減するはずだったが、30%すら達成できないのが確実になっている。


しかも電気料金は太陽光や風力買い取りのせいで2倍以上になり、企業向け電力は先進国で最高価格になった。

それでいて停電が頻発し、電力が足りないのでフランスの原発から電気を輸入している。

条件が良い日には消費電力の大半を自然エネルギーで賄えるが、発電した電力の大半は捨てている。


というのは太陽や風力発電所が多い北部と、工場が多い南部の送電網は繋がっていないからで、接続するには数十兆円以上が必要になる。

電力が足りないので現在もドイツの発電量の4割は石炭、1割を原子力で発電している。

今後太陽や風力を増やすとしても、風が吹かず曇りの日もあるので、火力などの発電能力は維持しなくてはならない。

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