バフムートは防御しにくく戦略的価値は低い

段階的な撤退
複数の欧米メディアによるとウクライナ軍は半年間守ってきた東部の町バフムートをロシア軍に明け渡し、戦略的撤退をしようとしている
バフムートはドネツク州の都市で2020年2月までの人口は約7万人、イギリス軍は以前から「重要ではない拠点」と言い続けてきた
バフムートはロシア国境から120キロの距離にあり、新露派が2014年から占拠しているドネツク州の州都ドネツク市は南に約60キロ離れている
バフムートの東側には弧を描くようにロシアが占領する町が並んでいて、どこからでもバフムートに砲弾が届きどこからでも攻めてこれる
バフムートの北東40キロから50キロには22年に激戦の末ロシア軍が占領したセベロドネツクとリシチャンシクがあり丁度ロシア軍のりゅう弾砲やロケット弾が届く
ロシア軍にとって攻めやすい距離だがバフムートは平原の中にあり、攻めて来るロシア軍が利用する森や遮蔽物がなく多くの損失を出した
ロシア軍はバフムートを拠点に西側に並んでいるウクライナの町を攻略できるが、今度はバフムートのロシア軍がウクライナから砲撃をあびるかも知れない
バフムートにはまだ1000人以上の住民が残っているが彼らを退去させるとウクライナ軍がバフムートに砲撃が可能になる
バフムートでウクライナ軍が劣勢になっている理由の一つはロシア軍より兵力が少ないからで、もう一つは使用できる火砲や砲弾が少ない
侵攻前のウクライナ軍兵力は14万人だがそれは事務員まで含めた人数なので、その半分程度だったと見た方が正しい
対するロシア軍は当初15万人程度で攻め込み半数は死傷したが新たに補充したので現在も20万人以上は駐留している
ウクライナ軍が現状何人なのか不明だが出国して兵役を拒否した人が多く、ウクライナに駐留するロシア兵より人数が少ないのは間違いない
バフムートに吸い寄せられたロシア軍
火砲と砲弾についてはロシア軍は1月で新しい砲弾やミサイルを使い果たしたが、ソ連時代に生産した砲弾を無限に保有している
ソ連製は低性能で不発弾が多いが弾数の制限なく使用できるので、この点でバフムートのロシア軍は有利でした
ウクライナ軍は欧米から兵器援助を受けているが現地の報告によると各国が援助したのは古い砲弾なので不発弾が多い
不発弾が多いうえに欧米の援助はソ連製の在庫より遥かに少数なので、ウクライナ軍はバフムートの火力でロシア軍より劣勢だった
ウクライナ軍の現地司令官はバフムートからの撤退を否定しているが、マリウポリやセベロドネツクが陥落した時もウクライナ軍は最終日まで撤退を否定していた
アメリカの戦争研究所は3月6日、ウクライナ軍は一斉に撤退するのではなく段階的に撤退しロシア軍を疲弊させようとすると分析した
イギリス軍から「守る価値が無い」と言われたバフムートにウクライナ軍が固執し続けたのには恐らく冬の時間稼ぎという面があった
22年秋の予想ではロシア軍は年明けに「大攻勢」に出る筈で、結果としてこれは行われなかったがウクライナ軍は冬を乗り切る必要があった
守る価値はないがロシア軍を食い止めて大きな損害を与えるバフムートで時間を稼ぎ、ウクライナ軍は厳冬期を乗り切ることができた
ロシア軍から見て他の都市を冬に攻めるのは難しいがバフムートは「もう少し」で陥落するように見え、このためロシア軍もバフムートに吸い寄せられた
バフムートは冬の間ロシア軍を引き付けて食い止める役割を果たしたとも言える