電気が無料で無限に使えれば良いが現実は違う

各国の思惑が対立し採決見送り
欧州では数年前に2040年代にガソリン車を廃止すEVとPHV(と水素)のみにする方針を英仏独などが次々に発表したが異論も出て来ている
EUヨーロッパ連合はエンジン車の新車の販売を2035年までに禁止する法律の採択を目指しているが、独伊など有力メーカーを持つ国が反対している
23年2月27日に行われたEUのエネルギー・運輸相会議ではドイツ政府代表が「合成燃料を使用した内燃機関の販売は許容されるべきだ」と反対を表明した
3月3日の法案採決でドイツが反対を表明しイタリア、ポーランド、ブルガリアも同調し、議長国のスウェーデンは承認の無期限延期を発表した
3月13日にはチェコのプラハにドイツ、イタリア、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、チェコ、スロバキアの運輸相が集まり禁止法案の修正を提案した
ガソリン車禁止は元々はドイツのメルケル首相が言い出したことで、太陽光と風力発電ですべてのエネルギーを賄えると主張していました
時代は巡ってドイツはEV反対に転じ最も熱心にガソリン車禁止を推進しているのはフランス、イギリスはEUから離脱したので今回は関係ない
フランスは2030年までにガソリン車のパリへの乗り入れを禁止する予定で、EUとは別にガソリン車を禁止する予定になっている
マクロン政権はガソリン車禁止に前のめりで、雇用が失われるという批判にはEVシフトで新しい雇用が創出されると意に介していない
フランスは欧州でも原発の発電比率が70%と高く、ドイツは逆に自然エネルギーが約50%で原発を廃止しようとしています
太陽光や風力は一見地球に優しいが広大な”地面”が必要なので、土地面積を電気に変換するのが太陽光や風力発電だと言えます
発電量の5割を自然エネルギーにしたドイツはもう発電に利用できる余剰の土地があまりなく、フランスは今まで熱心でなかったので増やす余地が大きい
ガソリン車も今後進化する
こうなると立場は逆転しドイツは原発廃止、火力発電廃止を国是にしたのでもう発電量を大幅に増やすことができない
フランスは広大なブドウ畑とか南仏の農地を太陽光風力発電にする事もでき、すべてEV化しても電力不足にはならないでしょう
太陽光や風力は基本的に平地で建設するもので山地に設置しても日当たりが悪かったり災害の原因になるので日本の地形に向いていない
自国自動車産業の保護という面もありドイツのほうがGDPに占める自動車産業の割合が大きく、フランスはどちらかというと自動車では負け組になっている分依存度が低い
去年英独仏で「新車販売の50%以上をEVが占めた」と報道されたが調べるとプリウスのようなHVを含む数字で、純粋なEVは10%程度に過ぎなかった
その区分では日本は軽自動車を除く新車販売の8割以上がEVになると思うが、言葉を言い換えただけで何の意味もありません
EVが売れるようになったのは2020年の新型コロナで生産網が打撃を受けてガソリン車が供給不足になり、EVの方は打撃を受けず生産数を増やせたことが一因でした
加えて各国政府はEV購入に1台数十万円から数百万もの補助金を出したので、EVを買わないと損をする状況が生まれた
さらにロシアのウクライナ侵攻でガソリン代が高騰しアメリカは日本の半額(リッター50円台)だったのが日本より高いリッター170円まで値上がりした
EV販売が増えると各国はEV補助金を減額したり打ち切り、ガソリン価格が落ち着いてガソリン車の供給不足が解消されたら状況は変わる可能性があります
EVの技術的進歩と低価格化が進めばEVのシェアは増えるでしょうが、ガソリン車や代替燃料車、HVも進化するのでオールEV化が最適解なのかは決定していません