賃金が高い国で労働力に頼る輸出産業は苦しくなる

一過性ではなく構造変化
韓国の2022年貿易収支は14年ぶりの赤字で金額は過去最大472億ドル(約6兆2000億円)だったが23年は赤字額が拡大している
韓国関税庁によると23年3月20日までの貿易赤字が241億300万ドルで、前年に比べて3倍以上増えた
22年は輸出が半導体高騰で過去最高だったが輸入もエネルギー価格高騰で過去最大で輸出額を上回り、突発的で例外的な事態とも考えられた
23年はエネルギー価格が沈静化して輸入額が減少したが、それ以上に半導体などが価格下落したうえに需要も減少し輸入額を下回った
こうした連動を見ていると22年は例外的な貿易赤字だったと言うよりは、韓国の産業構造が変化しつつあるとの見方ででてきています
23年に入って輸入より輸出が大幅に減少していて3月(20日まで)の輸出は昨年比17.4%減少、主力の半導体輸出は44.7%と半減した
半導体輸出額は7カ月以上にわたり減少し石油製品(-10.6%)や鉄鋼製品(-12.7%)、自動車部品(-4.5%)、無線通信機器(-40.8%)も減少、自動車だけが69.6%増えた
現代自動車アイオニック5などの韓国製EVが欧米で売れているという事なので、EV輸出が増加したとみられている
輸入は石炭のみ輸入が19.4%増え、原油(-10.3%)とガス(-23.1%)は2桁の減少で、3月の輸入額は前年比5.7%減少した
エネルギー高騰は一過性の現象だが輸出不振は世界景気の後退や韓国の国際競争力低下が影響していて、長期衰退の兆候が見られる
最も顕著なのは韓国製半導体の不振で2020年から22年はパンデミックによる混乱で世界的な半導体不足が発生し、韓国は労せずして漁夫の利を得た
22年後半から半導体不足は徐々に解消されてきたが今度は各国・企業が大増産をしたので半導体余りになるのが懸念されています
輸出立国は曲がり角に差し掛かっている
韓国は1970年代頃から輸出立国として成長し、一時は貿易依存度が100%を超えていたがGDPが増えるにつれて依存度は低下していきました
人口が少なくGDPが小さい国は輸出で急成長できるがGDPが10倍になったらもう輸出で高度成長は困難になります
韓国の輸出拡大の手法は日本の模倣で、日本と同じ輸出品を日本より安く生産し市場を奪うのに特化してきた
これだと日本と同じものを安い人件費と低コストの韓国で生産すればほぼ自動的に日本のシェアを奪えるので、合理的で楽な手法でした
だが文在寅政権は国民所得を向上させ、それは良いのだが生産コストも上昇したので生産国として韓国の競争力が急降下していきました
韓国の生産品はすべて日本と同一で韓国だけが作れるというものはなく、同じものは中国や東南アジアでも生産が可能です
例えば韓国の半導体はメモリーだけで高度な演算をするシステム半導体を作れないが、メモリー半導体の生産は台湾企業が得意としている
中国や東南アジアでも生産可能なので結局はコスト競争になってしまい、韓国の1人当たりGDPが向上するほど競争力は低下します
欧州先進国の主力製品はエアバスの旅客機とかですが、新興国や中進国では生産できないので、人件費やコストが高い国でも成立します
アメリカの主力産業は巨大IT企業群ですが、この分野は工場や労働者が不要なので技術さえ高ければ先進国のほうが有利です
韓国も今後新興国のような安い労働力に依存する産業から先進国の産業構造に変わる必要があるが、簡単ではないでしょう