半導体全体では米欧韓台が強く日本はその次(2019年の勢力図)

半導体の勝者が産業の勝者になる
世界の製造業の主戦場は20世紀に造船や鉄鋼からテレビ・家電に変わり21世紀の今また半導体に移行しようとしています
半導体の先祖は真空管で今もオーディオマニアが「音質が良いんだよ」などと言うが数値で比較するとICやLSIのほうがずっと性能が良い
半導体の性能は18か月ごとに2倍になっていて3年ごとに4倍、6年間では16倍、10年間でおよそ100倍近くに向上してきました(ムーアの法則より)
テレビやスマホの性能はそれほど早く向上せず数年後に少し違う程度、船は数十年後に違いが分かる程度で鉄鋼の技術革新は50年単位でしょう
進歩の速度が速い分野が技術や産業の主戦場になるので現在の商業技術で最も重要な分野は半導体であると言えます
半導体と言えば韓国のサムスンや台湾のTSMCが金額では大きいが、韓国が作っているのはメモリー半導体でTSMCはメーカーではなく半導体製造に特化し設計などをしてません
半導体を大きく分けると記憶装置に使うメモリー半導体、スマホやパソコンのCPUに使うロジック半導体、EVやエアコンの出力を制御するパワー半導体などがあります
21年から22年にかけて半導体不足で自動車生産が止まりましたが、サムスンやTSMCがメモリー半導体を大量生産しても、自動車に使う車載用半導体は不足していました
日本は半導体産業を復活させようとしていますが日本が狙っているのは韓国台湾で作れないような高度なメモリー半導体やパワー半導体で、アメリカはインテルが得意とするようなロジック半導体で強い
1990年代から2000年代に韓国の猛攻を受けた時も日本企業はより高度な半導体に移行しようとしたが、当時金額が大きいのは安いメモリーだったので高度な半導体を作っても生き残る市場がありませんでした
だが2020年代になってあらゆる物に半導体が搭載され制御されるようになり、今では自転車やキックボードすら半導体で出力などを制御しています
EVからエアコンまで電力制御をしているのはパワー半導体で、世界シェア1位から3位はドイツ・アメリカ・スイスですが日本企業も10位までに数社が食い込んでいる
日本が欧米や韓台にすら負けた原因
2019年時点の半導体の種類別シェアはメモリー半導体は合計18兆円のうちサムスンが7.2兆円、SKも2兆円でここでは韓国勢が非常に強い(以下経済産業省資料より)
CPUなどのロジック半導体は合計21兆円のうちインテル7.1兆円、2位以下もブロードコム、NVIDIA、AMDとアメリカ企業が非常に強い
EVなどの電力制御するパワー半導体は混戦模様で欧米日に加えて韓国台湾中国もシェア獲得を狙っています
カメラなどイメージセンサーではソニーが強いが市場規模は大きくなく、アクセルやブレーキ操作に使うアナログ半導体はTexas Instrumentsなど米国勢が上位を占めています
全体として見ると韓国や台湾(製造に特化しているのでメーカーではない)が占めているのは半導体産業の一部で、高度なものにるほどアメリカ企業が強く欧州もパワー半導体では強い
90年代から2000年代の高度半導体競争でなぜ日本は負けたのかですが、思い当たる最大の理由は「軍事研究の不在」でした
アメリカは年間100兆円近い軍事費と数兆円のNASA予算の一部が半導体など先端産業研究に使われ、その結果シリコンバレーのIT企業群が誕生しました
欧州は一国だけだと日本より軍事予算が少ないが全体として見れば巨大であり、欧州宇宙機関やエアバスも欧州全体として巨大です
日本はというと軍事費が少ないうえに最先端兵器は米国からの購入が多く、東大京大などの大学は軍事研究を拒否していました
宇宙予算は少なく航空機産業は存在せず、東芝やシャープなどの民間家電メーカーがバラバラに小規模な研究をしていただけでした
最先端の研究で負けて当然だった訳で、ジョブズやビルゲイツが通っていた大学では米軍の依頼で学生が核ミサイル開発をし、ノーベル賞クラスの研究者がゴロゴロ在籍していた
そうした大学では学生が自由に最先端のコンピューターを使いノーベル賞学者と共同研究をしていたので、90年代にIT産業として爆発的に発展しました
韓国や台湾すら官民一体で科学研究している時に、日本はやるべきことをやらなかったので競争に負けました
日本の文化とか勝者の驕りとは関係がなかったと思います