西安サミットの少し寂しいメンバー

中国版サミットに集まったメンバー
古代中国は皇帝の権威を誇示するため世界の指導者を集めていたが、その実態は中国と周辺の少数民族の首長やシルクロードを利用する国の使者を招いて外交をおこなっていました
邪馬台国の女王卑弥呼が魏に使者を送ったのもそういう事で、ローマ帝国やエジプト王朝と大国外交をしていた訳ではありませんでした
現代の中国は広島で開催されているG7先進国首脳会議に対抗して西安で「中国・中央アジアサミット」を開催したが、出席したメンバーは2000年前とあまり変わらなかった
西安サミットに出席したのはカザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンの大統領で以前ロシアが主催していたなんとか会議を同じ顔ぶれでした
反西側勢力が結集するならパキスタンやロシア、イラン、サウジ、アフリカや南米の国々が一堂に集まって「民主主義を倒す」と宣言したらそれなりの影響力があったでしょう
子分の北朝鮮すら参加せず盟友のパキスタン、最近なぜか接近しているインドやブラジル、トルコなども西安サミットを無視しました
かつて杭州でG20が開催された時は「大国中国にひれふす19カ国」のように中国国内では報道され、オバマ大統領はタラップや赤いじゅうたんを用意せず空港の端に駐機させ、警備員の同行も禁じる事で恥をかかせた
AIIB総会や一帯一路会合を中国で開催した時も「習近平に従う国々」のように演出し数十カ国の代表が集まっていました
今回の西安サミットはAIIBやG20のように「参加するとお金をくれる」ものでは無かったのとG7への対抗が露骨だったため主要国は参加しませんでした
AIIBには100カ国以上が参加しているか新興国や貧困国は「参加すると中国や先進国が金をくれる」と思って参加しています
英仏独のような先進国は「AIIBに参加すると金儲けができる」から参加していて、実際先進国から徴収した金を新興国に配っています
世界各国はこうした金儲けの機会には集まるものの、安全保障や外交戦略で中国と協力したい国は少ないようです
西安サミットに参加した5か国はいずれも旧ソ連で現在もロシアと中国に依存して生きているので、中ロに従う以外の選択肢を持っていません
中国の属国になりつつあるロシア
フランスのマクロン大統領は23年5月14日に仏日刊紙ロピニオン(L’Opinion)とのインタビューで次のように語った
「ウクライナ紛争でロシアは地政学的に敗北し今や中国の属国になりつつある
スウェーデンとフィンランドはNATOに加盟し、モスクワ自体も中国への依存を強めた。これは地政学的敗北だ」
発言は大きな反響を呼びロシア大統領報道官は「完全な誤解であり対中関係は特別な戦略的パートナーシップの性格を有するものである」と述べたがこれはロシア語では「その通りですね」の意味になります
これより前の4月6日にマクロンは北京を訪問してロシアを説得するよう習近平に依頼し、習はゼレンスキーに電話したが特に進展はなかった
マクロンはこの時台湾問題で「アメリカの下僕ではない」「欧州はアメリカに追従するべきでない」と述べ、中国の台湾侵攻では中国を支持するような発言をした
マクロンはロシアのウクライナ侵攻でも22年夏にロシアが優勢の時には「ウクライナが降伏しないせいで戦争が続いている」とウクライナを非難しロシアを支持する発言を何度も繰り返していた
その癖ウクライナが再び盛り返してロシアが劣勢になるとウクライナに自走対戦車砲などで支援し、どっちが勝っても自分が勝者の側につくような行動をしている
ロシアは中国の属国になりつつあると最初に言ったのは実はマクロンではなく、ウィリアム・バーンズ米CIA長官でした
バーンズCIA長官は23年4月11日に「ロシアは戦略的に失敗し中国の植民地になる勢いだ」と言っていて、マクロンはこれをオウムのように真似しただけだった
バーンズ長官の発言は「戦争初期のプーチンの狙いはNATOを分断し弱体化させることだったが、現実にはNATOの結束は強まり新たにフィンランドが加盟し、スウェーデンも加盟しようとしている」
「ロシアは中国頼みを加速させていて中国の経済的植民地になりかねない勢いだ。こうした状況を勘案するとロシアのウクライナ侵攻はプーチンの壮大なるオウンゴールとしか言いようがない」というものでした
例えばロシアの通貨ルーブルはあらゆる国から受け取りを拒否されているが、ロシアは中国にエネルギーや資源を輸出して人民元を受け取り、それで外国への支払いをしています
中国はこれを「人民元が国際基軸通貨になった」と言っているのだが、それは違うと思います