7月の株価暴落でボードを見上げる人
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2015年の中国経済を振り返ると、隠していた苦境が表に出てきた年でした。
AIIB創設やIMF通貨バスケット入りもあったが、悪い材料が目立ちました。
年初から苦戦した中国経済
2015年は中国にとって激動の年になり、潜在化していたリスクが顕在化しました。
2014年から続いていた香港民主化デモは年を明けても続いたが、結局は中国公安に鎮圧されています。
また2014年末頃から不動産価格の値下がりによって、シャドーバンクの破綻が連鎖的に発生しました。
中国では正規の銀行は共産党と国営企業しか相手にせず、国民はシャドーバンクから金を借りています。
シャドーバンクが金を貸さなくなった事で、工場などが次々に閉鎖され、経営者は失踪しています。
シャドーバンクは高利回りな投資対象にもなっていて、「理財商品」という名で多くの人が投資していました。
地方政府がシャドーバンクを経営したり、投資を募っていた例も有り、人々は安全な預金だと考えていました。
破綻したシャドーバンクは大小数千に達し、お金を預けた人の多くは破産しました。
中国では生産者物価が丸3年以上マイナスを続けていて、消費者物価も2%を割り込んでいます。
この数字はデフレ期の日本と同じで、中国は既に深刻なデフレに突入している疑いがあります。
2015年の年初に中国の指導部は7兆元(134兆円)のインフラ整備を認可しました。
これは不況対策のための補正予算に相当するものですが、日本の補正予算は3.3兆円でした。
中国は巨額の公共工事によって経済成長を維持しているのがはっきりと分かりました。
AIIBを巡る騒動
3月になるとAIIB(アジアインフラ投資銀行)にイギリスが参加表明し、雪崩のように参加国が増えました。
年初には数カ国だけだったが、イギリス参加後は最終的に57カ国に増えました。
中国は日本とアメリカにも参加を呼びかけたが、両国とも断っています。
アメリカはIMF、日本はアジア開発銀行を主導していて、AIIBは日米に対抗するものと考えられました。
日本のマスコミや経済学者は、「中国が世界を支配する時代だ。参加しないと孤立する」と大騒ぎをしました。
中国は欧州各国を首脳が訪問しては、数兆円の巨額投資を発表して参加を呼びかけ、欧州は金目当てに参加しました。
中国はシルクロード経済圏という物を提唱して、欧州からアジア、ASEAN全域を中国が支配するそうです。
巨額投資を当て込んだ周辺各国が参加し、参加国数でアジア開発銀行を上回りました。
日米と中国の信用力や資金力の違いから、AIIBの金利はADBの2倍以上になると予想されています。
すると「条件の良い案件」は全てADBが取ってしまい、「悪い案件」だけがAIIBに流れます。
自然、AIIBの貸付先は怪しげな軍事政権や、回収の見込みの無い国に限られ、不良債権の山になります。
言ってみればADBが都市銀行で、AIIBはサラ金や闇金の位置づけになります。
経済の悪化が表面化
2015年は中国の貿易が急減速し、輸出入とも前年比2桁減が続きました。
輸出が多いと貿易黒字、輸入が多いと貿易赤字です、この際どちらでも良く、貿易総額が減少したのが重要です。
中国経済そのものが縮小したので輸入が減少し、世界経済悪化と輸出競争力低下で輸出も減少しました。
中国は年単位でずっと貿易黒字、経常黒字なので外貨準備が増えるはずですが、2015年は急激に減少しました。
2014年末に450兆円だったのが、100兆円も減少したといわれています。
原因は人民元の暴落を食い止める為の元買い介入と、海外投資で巨額損失を出したからでした。
中国経済の悪化で外資が逃げ出し、人民元が売り浴びせられたので、暴落防止で当局が介入しました。
そんな努力も虚しく7月には株価の暴落が発生しました。
6月中旬以降の3週間で32%下落し、上場銘柄の70%以上が、売買停止とストップ安で取引停止になりました。
その後中国政府は何食わぬ顔で「今年の経済成長率は7%を達成」と発表し、世界中から疑惑の目が向けられました。
世界の経済学者や研究所が数字を見直したところ、7%と発表された1月から6月の成長率は、3%程度だと考えられています。
今までも噂としては中国がGDPを水増ししているといわれたが、それは誤差の範囲で大掛かりではないと考えられていました。
中国と言えば世界で最も自動車が売れる国だったが、9月までの販売は前年比マイナスでした。
そこで当局は小型車の税金を半額に値引きした結果、通年では何とかプラスになるようです。
中国の債務過剰問題も表面化し、公式発表ではGDPの10%台という事になっています。
ですが調査によってはGDPの200%を超えているという指摘もあり、債務隠しをやっているのは間違いない。
欧州各国に金をばら撒いた成果で、12月にはIMFの通貨バスケットに加わりました。
こうして2015年の中国経済は、隠していたものが表に出てきた1年だったといえます。