世界が不況になると超円高になり、日本は貿易で稼いだ金を全て吐き出す事になります。
120円を超えていたドル円レートはするすると下がり、最近は116円台まで下がりました。
110円という「防波堤」が破られれば、再び100円割れの可能性も出てきます。
全ての引き金は中国
2016年の年明け1月4日に中国株式市場が暴落し、連鎖反応のように世界経済が混乱し、円高が進行しています。
ドル円相場は2015年には1ドル120円台で安定していたが、一気に100円割れまで進む可能性があります。
一体世界では何が起きているのでしょうか。
今回の世界経済の変調の始まりは1980年代前半の日米経済戦争まで遡ることが出来ます。
1985年まで日本の為替レートは実質的に固定相場で、日本政府が決めたレートを、為替介入で維持していました。
これだと輸出で貿易黒字を蓄えても、円高にならないので、日本は輸出で大儲けしてアメリカは大損しました。
もう一つの超大国ソ連は、日本のせいかは知りませんが本当に倒産してしまい、欧州もギブアップして「EU」という共同国家を作りました。
ある国が固定為替レートを利用して大儲けすると、世界を破壊するくらいの影響があるというのが分かりました。
その後日本はプラザ合意をきっかけに変動為替レートに移行して、輸出で貿易黒字が増えると、その分円高になり損をするようになりました。
だから90年代以降の日本では「輸出で儲かる、儲かった」という事は一切無く、自分で自分の首を絞めただけです。
日本の過去の手口を模倣したのが中国と韓国で、為替を固定レートにしたまま輸出を無限に増やそうとしました。
特に中国は日本と同じように成功し、世界に破壊的な影響をもたらしました。
輸出立国の最後
爆買いによって原油やあらゆる資源価格が暴騰し、中国はガンガン輸入して世界の工場として輸出しました。
為替が変動相場制なら輸出でもうければ為替レートが上がるので、差し引きすると儲かりも損もしません。
だが人民元は固定レートなので、何の制限も受けずに輸出を拡大させ儲ける事ができました。
中国を結果的に助けたのが日米で、アジア通貨危機やリーマンショックという危機の度に金融緩和を行いました。
アメリカは自分自身のために金融緩和したが、投資家は自己の利益追求のために、最も儲かる中国に投資しました。
日本の金融緩和のお金も中国に向かい、日米が不況になるほど中国が儲かるという図式が成立しました。
ところが異変が起きたのが2013年頃で、中国の不動産市場が飽和してしまい、もう売れなくなってしまいました。
物事には必ず始まりと終わりがあるので、中国では人が住まない10万人規模の無人の都市が数百、数千も存在するとされています。
中国は共産主義なので市場動向と関係なく政府が土地開発して住宅を建て、その結果大量に売れ残ったのでした。
不動産悪化をきっかけに鉄道事業の赤字も表面化し、鉄道建設と運営費で数百兆円の負債を抱えているとされています。
国内需要がなくなったので中国は輸入を減らしたが、これが資源価格暴落を引き起こしました。
資源輸出国は中国が製造した製品を輸入する「お得意さん」でもあり、欧米や中国が多額の投資をしている投資先でもあります。
超円高になるメカニズム
原油価格が最高値の4分の1を割り込むと、資源国の破綻リスクが高まり、先進国や中国経済に深刻な影響を与えました。
日本は資源輸入国ですが、日本製品を買うのは資源国であり、資源国に投資している国も日本の得意先でした。
トータルでは資源が安く買えるよりも、世界経済悪化の悪影響を多く受けています。
日本は世界一の低金利国でデフレなので、日本の投資家は日本ではなく外国で投資しています。
外国人投資家も、日本でお金を借りて外国に投資すれば利ざやを稼げるので、円売りが加速し円安になりました。
これを円キャリー取り引きと言い、こうして世界が好景気だと、だいたい円安ドル高になります。
逆に世界の景気が悪くなると、今まで外国に投資していた日本の投資家は、資金を引き上げてドル売り円買いをします。
外国人投資家も円キャリーで利益が出なくなるので、ドル資産を円に替えて借金を返済します。
同時に外国人投資家は、こうした流れで円高になるのを予想し、投資の為にドルを売って円を買います。
こうして世界が不況になると、驚くほど短期間に全世界が「円を買おう」と言い出し超円高になるのです。
円高の規模は、日本が過去に蓄えた貿易黒字や経常黒字の規模に比例し、過去に貿易で儲けた分をこの時吐き出す破目になります。
だから変動相場制では輸出で稼いでも、結局儲からないのです。