日本国債は世界中で大人気で、日銀ですら購入出来ないのだった
引用:http://cdn.mainichi.jp/vol1/2016/05/20/20160520biz00m010006000p/9.jpg?1
国債買い取りが困難な事情
7月29日の日銀金融政策決定会合ではETFの追加購入が発表されたが、期待された国債購入拡大や金融緩和はなく、失望を誘った。
黒田総裁の会見前後に2円も円高になり、夜になって米GDP悪化が発表されると、さらに悪化しました。
日銀の姿勢に消極的だという批判が集中しているが、日銀はもう出口戦略に向っているのだという見方もある。
世界最大の投資銀行ゴールドマンサックスでは、日銀は技術的な困難に直面していて、大量の国債買取りができないと見ている。
困難とは日銀政策委員の誰かが反対したとか、財務省が抵抗しているのではなく、買い取れる国債がなくなってきている。
日銀は既に国債発行額の4割ほどを購入済みですが、残りの6割の購入は困難を極めるのだという。
まず既に国債を保有している機関でまだ手放していないのは、何らかの理由で手放せない事情を抱えている。
その筆頭が生保で、顧客と30年や一生涯などの長期契約を結び、集めた保険料で国債を購入してきました。
突発的な大災害が起きない限り、毎年一定額の支払いが発生し、毎年国債が償還されて現金を得ている。
現在マイナス金利で10年以下の国債金利はマイナスだが、10年を超える国債はプラスなので、手放す気は無い。
10年を超える国債は超長期債と呼ばれるが、プラス金利のうちは生保は絶対に手放さないでしょう。
もっとも額面よりかなりの高額で日銀が買い取るというなら、手放すかもしれません。
マイナス金利の方が外資は儲かる
生保は国債の保有を減らしているが、外資が積極的に日本国債を買っていることが、事態を悪化させている。
日本国債はマイナス金利だが、実は外資は「プラス金利」で日本国債を購入できるので、今や世界で大人気になっている。
その仕組みは日本の不況に原因があり、日本の銀行や生保は国内で資金運用しても利益がでないので、外国に投資します。
一方で日本は不況なので、外国から日本への投資は少なく、ここに受給の不均衡が生じます。
日本企業が外国に例えば1兆円をドルに交換するとき、1ドル100円なら100億ドル、ドルから円に交換する人が居て、初めて成立します。
ところがドルの需要が多いのに円の需要は少ないので、「スワップ取引」という制度で調整している。
「スワップ取引」を簡単に説明すると、日本の銀行とアメリカの銀行が1兆円と100億ドルを交換するが、スワップレートに基づいて、日本の銀行が金利を支払います。
アメリカの銀行は例えマイナス金利の国債を買っても、平均0.9%をノーリスクで得られるので、大人気というわけです。
外資が競って日本国債を購入するので、日銀による国債買取はますます困難になり、保有率5割くらいで頭打ちの可能性も指摘されています。
皮肉な事に日銀がマイナス金利にした事で、生保や邦銀は海外での資金運用を増やし、それがスワップレートを拡大させ、外資が日本国債購入を増やしています。
ではどうすれば日銀は国債の6割とか8割を購入できるかというと、外国人による国債購入を禁止するのは無理でしょう。
政府系金融機関(ゆうちょ、金融公庫ほか)が国債を大量に購入し、日銀に買い取ってもらうという方法もある。
日銀国債購入には直接引き受け必要
だがこれも外資との購入競争になるうえ、既に誰かの手に渡っている国債を買い取るのは難しい。
日銀が額面より大幅に高い金額で買い取るなら手放すでしょうが、思い切った手を打たないと大量の買取は難しそうです。
日銀は今までも額面を上回る価格で国債を購入し、だからこそ保有者は売却に応じたのだが、もっと多くの金額を日銀に要求するでしょう。
2015年度には買い取り価格と償還価格の差額が8739億円で、日銀はいずれ赤字になります。
市場を通して買い取るから、額面以上で買わなくてはならないので、国債購入を拡大するなら、政府から直接購入した方が良いです。
それには法改正が必要なので、結局は政府と安倍首相にボールが返されるのでした。