収穫する近大マグロ
引用:https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-FO064_TUNApr_G_20141114094015.jpg
世界初の完全養殖マグロに近畿大学が成功したのは2002年で、早くも14年が経過しました。
完全養殖マグロの実用化はどこまで進んだのでしょうか。
計画から46年
水産庁がマグロ養殖を計画したのはなんと1970年で、最初に成功するまで32年が掛かっていた。
まずマグロに出産や受精させるまでが一苦労で、稚魚が孵化しても数日で全滅してしまった。
2008年に人口飼料が開発されてコストが下がり、さらに海の養殖場から地上の水槽で飼育可能になった。
近大は豊田通商と組んで大量生産に乗り出し、2020年に年間30万尾の稚魚を生産する計画を発表しました。
近大はそのうち6000尾240トンの完全養殖クロマグロを生産し、日本の養殖マグロ稚魚の半分を出荷する。
2013年に大阪、2014年に東京銀座に、近大マグロをメインにした和歌山県産養殖魚専門の料理店をオープンしました。
民間ではマルハニチロが1987年から研究をはじめ2010年に成功、2016年に最初の完全養殖マグロを出荷しました。
近大が和歌山県中心だったのに対してマルハニチロは、鹿児島や三重県で稚魚を育てて、大分県で養殖しています。
HPには年間2500匹の稚魚を養殖していると書かれていて、50キロまで成長させてから出荷する。
2020年には稚魚から養殖したマグロを年間3000トン出荷したいとしている。
完全養殖のクロマグロを15年度からイオンなどで販売していて、今後は料理店などにも出荷したいとしている。
クロマグロの全世界の漁獲量は2万6千トンで国内養殖(畜養)は1万5千トンとなっています。
20年後には世界の半分が完全養殖に
現在完全養殖マグロの出荷量は年間300トン程度に過ぎず、天然物に代わりえる存在にはなっていません。
近大とマルハニチロの稚魚出荷がうまくいけば、2020年には約1万トンほどを完全養殖マグロで賄える計算になります。
そして3番目の完全養殖マグロ事業者として日本水産が名乗りを上げ、2017年冬にも出荷できると発表しました。
日本水産ではマグロをブランド化し「喜鮪(きつな)金ラベル」としてスーパーなどで販売します。
18年度に1万尾500トン、19年度に2万尾1000トンを出荷する計画で、このペースなら2020年代には数千トン出荷できるでしょう。
極洋も17年度中に年間200トン規模で、完全養殖マグロの出荷を始めると発表しています。
これらを合計すると2020年代には国内で養殖(畜養)している1万5千トン全てを、稚魚から完全養殖で賄えるかも知れません。
2020年代には全世界のクロマグロ出荷量の3分の1、2030年代には半分以上を完全養殖で確保できるでしょう。
さらに減少した天然クロマグロも、人口養殖の稚魚を放流する事で、回復できるかも知れません。
太平洋クロマグロは1960年に比べて8割減少となっていて、絶滅危惧種に指定され漁獲割り当ては毎年減少しています。
イオンが販売したマルハニチロのクロマグロは、100gあたり1000円から2500円と、天然物と同じ程度の値段だった。
近大マグロを販売している「新鮮組」HPによるとキロ単価6500円と書かれているので、100g650円という事になります。(一本売り)
解体して「中トロ、大トロ」などにすると、マルハニチロと同じ程度、したがって天然と同じ程度になっています。
食べた人によると天然物より脂が乗っていて、かなり美味しいという事です。
稚魚から手間ひまを掛けて育てているので、大量生産されても100円寿司で食べれるとは思えないが、少しは身近になるかも知れない。