金融というより、怪しげな動画を共有するP2Pソフトに近い概念
引用:http://www.nikkei.com/content/pic/20160105/96959999889DEBE7E5E7E3EAEBE2E2E7E2E3E0E2E3E4949490E2E2E2-DSKKZO9575191005012016FFB000-PB1-2.jpg
ブロックチェーンは次世代の金融システムという期待の一方で、批判的な意見が強い。
流行の最先端技術はブームか
かつて大流行し、次世代の主流になると言われたが、すぐに消えた技術が無数に存在しました。
10年ほど前にテレビで言っていた「ユビキタス社会」は口にするのも恥ずかしい概念だった。
当時すべての商品にICチップが取り付けられて、レジで計算しなくても自動的に会計されると言われていた。
今ほとんど同じ事を言っているのが「ItoT社会」で全ての商品をインターネットに繋げて管理するという。
ちょっと前に流行ったのが3D技術で、世の中はすべて3Dになると言われていたが、今はVRやARに替わった。
車の世界でも次々に夢の技術が登場し、今は自動運転が有望視されています。
金融界で最近注目されているのがブロックチェーンで、ビットコインと言った方が分かり易い。
普通のネット銀行は独自のサーバーや巨大コンピューダが情報を管理しているが、ブロックチェーンにはそうしたものが一切無い。
ビットコインを利用する一人一人のパソコンに台帳が記録されていて、他の利用者のPC上の台帳にも同じ情報が記録されている。
誰か一人が台帳を改ざんすると、他の人の台帳と一致しないので、改ざんは不可能でしかも暗号化されている。
巨大銀行を上回る世界的な金融ネットワークが、コストゼロで構築できるのに注目が集まった。
ブロックチェーンは次世代の金融システムの中心になるだろうと専門家らは予想しました。
ビットコインはもう進歩しない
その矢先に香港の世界最大のビットコイン取引所で、多額のコインが盗まれる事件が発生しました。
これがブロックチェーンでなく普通の銀行ネットワークだったら、犯人を捕まえればそれで終わりです。
だがブロックチェーンには管理者や運営企業が存在しないので、一人の犯罪がシステム全ての信用を崩壊させます。
つまりブロックチェーンは、利用者全員が「善人」である事が必要で、ネット掲示板やP2Pに似ています。
P2Pはパソコン同士で情報を共有するシステムで、悪意ある人間が一人入り込んだら、防止する手段はありません。
ネットの匿名掲示板も利用者の善意に支えられていて、犯罪に悪用された例がとても多い。
ブロックチェーンには他にも重大な問題があり、発展性が殆どない。
ネット掲示板や怪しいP2Pソフトは誕生以来あまり変わっていないが、「みんなで共有する」系の技術は意外に柔軟性がない。
ステファン・トーマスという人が語ったブロックチェーンの欠点として、柔軟性に欠けるとしている。
別の人は、ブロックチェーンの理論は良いが実戦向きではない、という言い方をしている。
一度出来上がったシステムに改良を加えたり、仕様変更するのはほぼ不可能で、参加者全員の合意が必要だと書かれている。
さらに「悪意ある参加者」の問題は、金融界でも存在するようです。
5年後に忘れられる新技術
ビットコインを操作すれば数百億円を独り占めできるなら、悪意を止める事は難しい。
ネット掲示板や怪しいP2Pソフトが社会に普及しなかったのは安全性が低かったからで、人々はツイッターやフェイスブックの方を好んだ。
まして自分のお金を預けるのに、責任者や銀行が安全を保障しないブロックチェーンを選ばないでしょう。
今でもビットコインを利用する人の目的の大半は、脱税や不正送金、政府に把握されたくないお金で、まともな金ではない。
こうした訳ありの人たちは、1%の確率で金を奪われるとしても、99%成功するなら大歓迎です。
だが一般の人は、少ない確率でも事故が起こり、誰も保証してくれないものにはお金を預けないでしょう。
金融界の人たちはいつもの調子で「ブロックチェーンは世界で100兆円の規模に広がるだろう」と予想しています。
だがこの人たちは10年前のユビキタスブームや、5年前の3Dブームでも、同じように言っていました。
「ブロックチェーンはインターネットの次の社会基盤」とも言っていますが、5年後にはみんな忘れているかも知れません。