リーマンショックは世界が同時に打撃を受けたが、軍事費が多い国は早く立ち直り、日本は最も回復が遅かった。
軍隊の経済活動が大きい国ほど経済の回復力は強い。
引用:http://blog-imgs-59.fc2.com/t/o/k/tokyo239snapshot/blog_import_52a40e182fc6d.jpg
防衛費1%枠という妖怪
近年の日本の防衛環境は北朝鮮の核ミサイル開発や中国軍の活動範囲拡大など厳しいものになった。
中国はGDP成長率が5%に低下しても、8%以上の軍拡を続けている。
一方で日本の防衛力強化も進められ5兆円の大台を超えたが、GDP1%枠は突破していない。
防衛費は5兆1000億円になり過去最高なのだが、日本のGDPも545兆円に増えた。
この結果防衛費が5兆4500億円を超えない限りGDP比1%を超えない事になった。
防衛費1%枠は1967年以降ずっと守られているが、1950年台には対GNP比3%以上ありました。
当時防衛費よりも戦争で破綻した民間部門に投資したかった日本は防衛費を1%台に抑えて、安全保障を米軍に依存する政策を取った。
1967年にGNP比1%を切り、1974年に首相になった三木武夫が「防衛費はGNP比1%以内に限る」という1%枠を閣議決定し固定化しました。
三木武夫は自民党内でも最も左派的な人物で「日本が戦争に負けてよかった。日本が負けたときは嬉しかった」と笑顔で話すような人間で、心底日本を憎んでいた。
日本が防衛費の割合を減らしていったのは、国防より民生復興を優先させたかったからだが、この日から政治思想になった。
防衛予算が1%を超えることは「帝国主義の復活」とされ「過去の侵略戦争を反省していない」証拠とされるようになった。
その後中曽根首相は防衛費1%を小数点以下で一瞬越えたものの破られず、小泉内閣は口だけで防衛費を削減した。
安全保障より閣議決定が重要
安倍内閣でも「1%枠は存在しない」と言いながら1%を超えないようにしているので、実際に今でも1%枠は存在している。
防衛予算の上限が日本の安保環境と無関係に固定されているので、必要な装備を買ったしわ寄せがどこかで出てくる。
F35や護衛艦や無人戦闘機などの支払いの多くが、後年度に先送りされ正面装備以外の予算を減らすなどして対処している。
何らかの合理性があってそうしているのではなく、安倍首相は1974年に三木首相が決めた「防衛費1%枠」を守るためだけに国防を犠牲にしています。
閣議決定は国会議員の採決ではなく、閣僚が集まって合意したものに過ぎないが、閣議決定するとその日のうちに天皇が署名する事になっている。
国会決議にも天皇は署名しているが、国会決議は国会で再度審議して無効にすれば無効にできるが、閣議決定は無効にする制度がない。
正式な審議や採決ではない為に、閣議決定を否定する制度がなく、否定の閣議決定をすることも出来ない。
天皇が正式に署名した文書を後になって「やっぱり無効にするわ」という事は日本では絶対にありえない。
驚くべきことだが日本では国会決議や法律よりも、閣議決定の方が永続的な影響をもち、誰もこれを否定したり訂正できないのです。
それはさておき防衛省は限られた予算の範囲でF35、無人偵察機、新型給油機、新型空中管制機などを次々に導入しました。
ミサイル防衛システムやイージス艦新型ミサイル、パトリオット能力強化、新型潜水艦、無人潜水艇やステルス戦闘機の研究も行っている。
F35戦闘機の部隊配備も行われる予定で、無人偵察機も三沢基地への配備が決まっている。
軍隊と大学が結びついて生まれるもの
重要な動きとして防衛省の研究助成費が各大学に支給されたことで、金額は少なかったが多くの大学が関心を示しました。
2016年に6億円だった研究助成費は2017年に110億円に増額され、将来はさらに増額されると考えられます。
ここで思い起こすのはアメリカの「シリコンバレー」で、その成り立ちは第二次大戦の軍需産業でした。
第二次大戦前半にイギリスはドイツ軍の猛攻撃を受けて今にも負けそうになり、チャーチルはアメリカに泣きついてきました。
イギリスがドイツに負けると欧州はドイツ統一国家になり、アメリカは国力でドイツ+日本より劣勢に立たされます。
イギリス空軍がドイツ空軍に勝つ事にアメリカの存亡が掛かっていて、後にシリコンバレーを作る大学研究者が貢献しました。
軍事研究が盛んだったスタンフォード大学がシリコンバレーにあり、大学の卒業生やパートナー企業が周辺に集まりました。
アメリカの大学ではアポロ計画や原爆開発なども行っていて、普通の大学生が核ミサイルを開発して奨学金を貰っています。
彼らは卒業してIT企業を作り、マイクロソフトやアップルになりました。
大学にはアポロ宇宙船の設計者のような教授や研究者が普通に存在し、学生達は最先端の研究に参加し自由に設備を使っていました。
こうしたお金は全てアメリカ軍とNASAから出ていて、シリコンバレーをつくったのはアメリカ軍でした。
日本の研究助成費がすぐにこれほどの効果を挙げるとは思わないが、「東大を卒業しても何の役にも立たない」ような状況は改善されるかも知れません。
軍事費には防衛力以外に「公共事業」という意味があり、70兆円の予算を持つアメリカ軍は世界最大の公共事業団体になっています。
アメリカの成長率がかならず日本より高く、リーマンショックから早く回復した理由の一つは、アメリカ軍による公共事業効果が支えたからでもあります。