残業とはなにか
日本企業の残業の多さが社会問題になっていて、きっかけは有名企業の新入社員への過酷な労働環境が明るみに出たことだった。
残業が多いことは労働者の健康問題と捉えられる場合が多いが、企業の生産性低下の原因にもなっている。
一般的には残業が多い=会社に貢献しているとなり、残業をすればするほど役に立っていると捉えられている。
だが日本企業の生産性は先進国で最下位であり、一部の新興国より劣っている。
生産性とは一言で定義すると、1時間当たりに生み出した価値であり、分かりやすく言うと「時給」にもっとも近い。
近年ブラック企業と名指しされた日本企業の多くは一日10時間以上労働で休日なし、残業手当を支払っていなかった。
一日8時間、週40時間の給料しか払わずに一日12時間、週80時間働かせると賃金半分の労働者を2人雇ったのと同じになる。
企業は大儲けで日本企業の「生産性」は世界一になりそうだが、そうはならず逆に世界最低になってしまいました。
まず8時間の給料しか払わず12時間拘束すると、労働者は毎日4時間、週20時間から40時間も「ムダに生きている」状態になってしまう。
会社に拘束されていた20時間で牛丼屋のバイトでもやれば、週に2万円のバイト料が貰えたのにゼロになってしまった。
また拘束された時間に趣味を楽しんだり消費活動をすれば日本のGDPに貢献したが、この会社は日本経済にも悪影響を与えた。
労働者は消費者でもあるので、サービス残業は確実に日本人の収入を下げてしまい、実質賃金低下の原因を作った。
残業が多い組織は危機に弱い
「サービス残業」は日本経済に打撃を与える経済犯罪だが、政府は『残業はいいことだ』と考えて取り締まりませんでした。
その結果が先進国最低の生産性で、働いても働いても給料が減り生活が苦しくなるというデフレ経済の原因も作った。
サービスでない残業も生産性を低下させ、同じ価値を生み出すのに長時間かけている企業ほど「悪い企業」なのです。
例えば残業一切なしで利益を出す会社と、社長が「しぬまで働け!」と怒鳴っている残業週20時間の企業があるとします。
もうちょっと経済環境が悪くなったときに、ノー残業企業は残業代を払って社員に少し残ってもらえば、危機を乗り切ることができます。
一方過酷な残業企業ではもう仕事量を増やすことは出来ず、新たに人を雇うと人件費がかかるし、給料を下げてもっと残業させるしかありません。
危機の時にまっさきに倒産するのは残業が多い企業で、まったく残業をしない企業は余力が大きい事になります。
新しい事業を始めたり事業拡張するときも同じで、余力が大きい企業が成長し、社員全員が限界まで働いている企業に将来性はありません。
日本全体がサービス残業を進めた結果、国中が成長余地のない「限界企業」のようになりました。
日本軍と残業
実は日本がこのような状況になったのはこれが初めてではなく、第二次対戦中がこのような状況でした。
国民全体が「欲しがりません勝つまでは」といって限界まで労働していて、最初のうちそれで「怠け者」の米英より優位に立つ事ができました。
だが大戦初期に「怠け者」米英人は日独にコテンパンにやっつけられて目を覚まし、不眠不休で軍需物資を生産し物量で圧倒しました。
戦争前から国民全員が限界まで働いていた日本は、生産量を増やせず、戦争が長引くほどジリ貧になっていった。
アメリカ人は余暇にバカンスを楽しむ時間を減らして工場で働き、生産量を大きく増やす余力があった。
人口が違うとか資源量が違うという以外にも、日米には生産性の違いという格差が大戦前に存在していました。
この教訓は何かというと最初から過酷な労働をしていた日本には余力がなく、怠けていた米英人は余力たっぷりだったという事です。
懸命になって限界まで働くのもたまには必要ですが、いつもそうだったらいずれその企業は倒産します。