首に縄をつけて連行される捕虜、あまり人道意識はなかったようです
引用:https://1.bp.blogspot.com/-1cs8HSqDlEs/WLDhzEr5xrI/AAAAAAAATxE/UwZHDn2s6egVN7HGm3396wr0nOZAS6eSwCLcB/s1600/nubios%2Bnubians%2Bblack%2Bnegros.jpg
古代エジプトの労働者や職人
エジプトでは今も続々と新たな墓地や遺跡が発見され、ピラミッド内で新たな空間が発見されたりしている。
昔の考古学ではピラミッドは単純に、過酷な奴隷労働によって建設されたとしていたが、最近は違ってきている。
労働者を集めるのに報酬を出したり、技術者にはより高い報酬を出したり、ピラミッドには失業者救済の意味もあったと言われている。
2017年9月にはルクソール近郊で、3,500年前の金細工職人の墓と思われる遺跡が発見されている。
金細工職人の名前もアメンエムハトと妻のアメンホテプと分かっており、家族とみられる人も一緒に埋葬されていた。
金細工職人が王や権力者のように埋葬されていた事から、古代エジプトでは尊敬の対象で、非常に良い暮らしをしていたと分かる。
日本の古墳で金が発見されるのは今から1600年ほど前の古墳時代であり、国内で金鉱が発見されたのは西暦750年ごろでした。
エジプトが古代の超大国になった理由の一つは、非常に古くから大量の金を産出した事にもありました。
金属の加工ではアジアや西洋より遥かに先んじており、巨大な石を削ってピラミッドやスフィンクスを建造しました。
2017年8月にはカイロから200km離れた場所で、2000年前に作られ500年以上使われた共同墓地が発見されました。
共同なのでそれほど高い地位ではないと考えられるが、このような墓地が周囲に多く存在し、多数の人が葬られた。
2010年1月にはギザの大ピラミッド近くで、ピラミッド建設に従事した労働者と思われる墓地などが発見されていました。
ピラミッド労働者の身分
労働者の墓はクフ王のピラミッド近くにあり、4,510年前の最も古い時期に建設されたと見られる。
エジプト考古最高評議会では、ナイ川デルタの豪族が、免税の見返りとして、労働者を派遣した証拠も見つかったと発表している。
考古最高評議会では、クフ王の墓の建設した労働者は1万人未満と試算している。
評議会はこれらの発掘調査によって「ピラミッド建設労働者が奴隷ではなかった」と発表したが、それはどうだろうか。
豪族が免税の見返りに労働者を送ったのだから、彼らは豪族の所有物か、少なくとも命令を拒否できない立場だったようです。
墓があり報酬を貰っていたから奴隷ではないとは言い切れず、そうした制度は世界史の多くで見られる。
ピラミッドの労働者には報酬としてパンなどの食料が与えられたが、食べ物がなくては働けないので、当たり前とも言える。
建設労働者には休暇があり病気療養や怪我の手当てもしていたと言われている。
古代エジプトには定期的な休日の概念がなかったので、こうした不定期の休み以外に休暇はありませんでした。
旧約聖書には、捕らえられ強制労働させられたと書かれている
引用:泰西古典絵画紀行http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/37/1eb01bc04a07d587e7e911663e2db99c.jpg
聖書に書かれた内容との落差
『出エジプト記』は有名な旧約聖書の2番目の書で、ユダヤ人はエジプトで奴隷として強制労働させられていたと書いてあります。
最初パレスチナで暮らしていたユダヤ人は、もっと良い暮らしをしようと思ってエジプトに来たら、王に捕まって強制労働させられたというのが『出エジプト記』です。
なにやら在日の強制連行とか徴用に似ているが、モーセはユダヤの民を連れて脱出し、神に祈ったところ海が割れて道ができ、無事に脱出した。
旧約聖書にははっきりと「奴隷だった」「強制労働だった」と書かれているが、どちらが正しいのか分かっていない。
『出エジプト記』に書かれた出来事は紀元前1500年ごろと推測されているので、今から3,500年前、まだピラミッドが建造されていた時代でした。
『出エジプト記』を含む旧約聖書は、紀元前400年ごろ書かれたと考えられていて、800年から1000年も後に書かれました。
内容が全て事実か、年代が正しいかなどは確認しようが無く、それまで口頭で伝わった伝承をまとめたのではないかと考えられます。
旧約聖書が書かれた頃のユダヤ人はペルシア帝国やアレクサンダー大王、エジプト王朝などに迫害され、被害者意識に凝り固まっていた。
従って旧約聖書はユダヤ人の迫害を強調するものになっており、古代エジプトにも迫害されたと書きたかったのかも知れない。
とはいえ現存する最古の文書による記録であり、エジプトの労働者は皆幸せでしたというユートピア物語は、信憑性が低い。
ピラミッドの労働者は拒否できない命令で集められ、一定の報酬が与えられ、休暇や病気の治療もなされ、共同墓地に埋葬もされた。
労働はおそらく強制的な面があり、脱走すると『出エジプト記』のように兵士が追いかけてきたのではないだろうか。