水道民営化で紛糾
水道法改正案が衆参両院で可決し成立したが、水道民営化をめぐって反対意見が出ている。
日本の水道は戦後の高度成長期に整備され、50年前後経過し老朽化が進んでいます。
水道事業は市町村単位でばらばらに行われていて、組織力も資金もありませんでした。
単純に予算不足という以外に、仮に国からの補助金で予算がついたとしても、水道工事できる人材がいない。
家庭の配管を替える程度なら水道屋さんで可能だが、もっと大規模な工事の専門家が高齢で引退している。
人口数千人から数万人程度の自治体では、独自に水道事業を運営するのが不可能になっています。
だがら統合して大規模にし、電力会社やJRのような大きな組織にしようという考え方がひとつ。
さらに民間に事業委託できるようにし、民営化できるように規制緩和するというのが盛り込まれています。
同じ公共設備でも電気会社大手は10社しか存在しないのに、水道事業者は1344社も存在しているので統合しようという事です。
民営化は大企業でなくてはならない
ところが特に海外で先に民営化した国では失敗例が多く、欧米の多くが失敗しています。
アメリカの例では水道会社が利益を追求した結果、値上げしたうえ儲かる家庭にしか水を供給しない例もある。
アメリカは水道も資本主義なので、過疎地域で水道水が飲めないのは当たり前で、水道がない地域も多い。
改正案が問題だと思えるのは、JRは国鉄という全国組織を民営化したので、実際のところ「大日本帝国鉄道会社」のような組織になっている。
民営化した郵政も同じで元は国営の一つの事業者だったし、NTTや民営化した多くの企業がそうです。
一つの大きな国営事業だったものを民営化しても、国鉄がJRになっただけでそれほど大きく変わりません。
だが今まで市町村でやっていた事業を民営化すると、アメリカのような自由競争になりかねない。
企業の利益を考えたら「ここは儲からないから水道を供給しない」という判断に至るでしょう。
JRとバスの違いを考えれば分かりやすく、JRは黒字路線の利益によって赤字路線を運営しています。
赤字地域は水道廃止になりかねない
JR北海道には黒字路線がなくぜんぶ赤字なので、廃線が進められています。
バスは小さな会社に分かれているので、都市部の会社は儲かっているが田舎は赤字なので路線廃止が続いています。
バスもJRのように「東日本バス」とかに統一すれば、黒字路線の利益で赤字路線を補填できるでしょう。
水道はというとバス路線のように細分化されているので、赤字の水道は廃止せざるを得なくなります。
これを防ぐには一つの水道会社が受け持つ地域を人口数千万人にすればいいのだが、自由化するとバスのように小規模になります。
東電のような大手電力会社は評判が悪いが、広い地域を受け持つことで全国すべての村々まで電気を供給しています。
これを細分化して小さな電力会社にしてしまったら、当然赤字の地域は電気なしになるか、都市部の数十倍の電気料金になります。
民営化するとしても「関東、関西、九州」のように規模が大きく人口も多ければあまり問題は起きないでしょう。
改正案では細切れのままバラバラに民営化するようなので、これでは大失敗しかねない。
国鉄や電力会社のように、最初に統合してから民営化したほうが良かった。