産業革新投資機構(JIC)をめぐって経済産業省と民間出身経営陣が対立しています。
12月10日にJICの田中正明社長は、民間出身役員全員の辞任を表明し政府を批判しました。
経済産業省の担当局長は糟谷氏で、田中社長は経産省「リスクマネー研究会」の委員でした。
この研究会がJIC設立協議会で、委員だった田中氏がエスカレーター式に社長に就任した。
田中氏が糟谷局長から報酬を提示されたのは2018年6月で、ベース給・管理報酬・業績報酬の合計で5000万円以上と提示されました。
9月になると業績報酬を含めて、年によって1億円を超す場合もあると文書で提案されました。
10月になると経産省は報酬額に難色を示し始め、11月3日に朝日新聞が高額報酬を批判する記事を掲載しました。
10月25日に取締役会で役員報酬規定を決議し、経産省に届け出たころから両者の対立が表面化してきた。
11月6日に糟谷局長がJICに「報酬額を公表しないで欲しい」と依頼し、9日には嶋田隆事務次官が報酬の再協議を申し入れた。
11月24日に事務次官は報酬3,150万円、公的資金から報酬を出さないと通告し、田中社長が反発しました。
経産省は辞任するJIC役員の後任選出を糟谷局長に任せ、糟谷局長自身がJICに出向する検討もしている。
ここまで見てきて気になるのは糟谷敏秀局長(現在は官房長)を軸にして対立が起きたことで、どちらにも嘘をついていた疑いがある。
JICは経産省の天下り先?
田中氏側には高額報酬を約束する一方で、経済省事務次官にも取り入って報酬を安くしようとした等が考えられる。
報酬について糟谷局長が経済省に報告していなかったのは明白で、1億円の約束も経済省は合意していなかった。
対立が明るみになっても経済省は糟谷官房長を担当から外さず、JICより糟谷氏の地位を守る姿勢を見せている。
以前問題になった「もりかけ騒動」の森友学園への国有地売却で、財務省局長が独断で安く払い下げていたのに似た構図です。
森友学園では本来10億円の価値がある国有地を、地中の廃棄物を過大に見積もって1億3400万円で売却した。
理由は財務官僚が籠池理事長の「おれは総理の友達だから、大変な事になるぞ」というハッタリを信じたからでした。
森友学園では籠池理事長らが起訴されたが一方の当事者である財務官僚は一人も逮捕されず、検察の不公正ぶりが際立った。
東京地検や検察、警察も官僚であり、官僚仲間を”売る”のはタブーになっているようです。
産業革新投資機構(JIC)は今まで120件以上、合計1兆円以上の投資をしていて、2016年まで370億円の投資損失を出している。
今までは株式会社産業革新投資機構だったが、2018年9月25日に「産業革新投資機構」に看板を掛け替え新社長を任命した。
理由は赤字垂れ流しで投資損失を出していたからで、その新社長が「1億円よこすなら社長になってやる」と言って経産省局長が了承したという話です。
JICの目的は投資利益を上げる事ではなく、競争力のある産業育成だったが、実際はゾンビ企業救済所になっていると指摘されている。
役所の仕事は「利益が目的ではない」という建前から「利益を挙げなくて良い」むしろ「利益を出してはならない」という妙な行動原理になりやすい。
JICもそのパターンで、むしろ利益が出そうもない対象に好んで投資し、利益が出そうな事業は「民間と競合する」として避けていた。
存在理由自体が曖昧で、そもそも経産省官僚が退官後の天下り先として設立した疑いすらある。