動き出す灰色のサイ
中国の習近平は最近「灰色のサイ」という言葉を演説で良く使っている。
政府や地方のトップを集めた1月の演説では、『ブラックスワン』と『灰色のサイ』の2つのリスクへの警戒を指示した。
「ブラックスワン」はめったに起こらないが、大きな影響を及ぼす問題を差している。
「灰色のサイ」は起こる確率が高が、見ているしかないような問題を差している。
サイが灰色なのは普通で、普段はおとなしいが怒るとライオンの群れを蹴散らすほど強い。
ライオンがいかに強くてもサイからは逃げ回るしかなく、見ているだけしかできない。
中国にとって灰色のサイは巨額債務で、国家債務から地方債務、金融債務から家計債務、企業債務まで積みあがっている。
中国は1980年ごろから40年間も高度成長したが、その原動力は借金を増やして経済成長して返済することでした。
経済成長率が債務増加を上回る限り無限に経済成長できるが、このサイクルは2008年ごろ限界に達した。
2008年は北京五輪の年だったがリーマンショックの年でもあり、中国は50兆円もの経済対策を行った。
公共事業や公的資金投入で強引に経済成長を続けたが、この時以来毎年50兆円から増額しなくてはならなくなった。
公共事業で経済成長を維持するには、バブル前後の日本がそうだったように、毎年投資金額を増額する必要がある。
巨大化する中国の債務雪だるま
中国政府は今では毎年300兆円以上の経済投資をしているが、成長率は徐々に低下して6.5%になった。
今後も5%以上の高度成長を維持するには、毎年400兆円とか500兆円の公共投資が必要になる。
こうして中国の公的債務は膨れ上がり、中央と地方で4000兆円以上に達していると推測されている。
金融機関の金融債務、家庭の家計債務、企業の企業債務も同様に膨らみ切っている。
2018年に中国の社債デフォルトは過去最大だったが、2019年3月までに社債392億元がデフォルト氏、前年の3倍以上だった。
それだけの企業が経営破綻しているということなので、中国経済の下降トレンドが明白になっている。
米中貿易摩擦の激化で中国企業はますます苦境に陥り、米国への輸出が多い企業は大きな打撃を受けている。
中国政府はまたもや大規模な経済投資を発表し、新たな公共事業で経済不振を乗り切ろうとしている。
中国企業も相互保障などで債務を拡大しており、今後も中国は雪だるまのように債務が膨らむ。
不良債権を相互に持ち合うことで分散しているが、1社が破綻すれば債務を持ち合っている全社が連鎖破綻する可能性がある。
果たして中国の債務雪だるまはどこまで巨大化を続けられるのでしょうか。