トランプ大統領はツイッターで予告した通り、19年5月10日0時から中国製品の関税を引き上げました。
2000億ドル(約22兆2000億円)の品目に対して10%だった関税を25%に引き上げたが、これはどの程度の規模でしょうか。
米国が2018年に中国から輸入した貿易金額は5000億ドル規模なのに対し、輸出額は1000億ドル規模に過ぎない。
この結果アメリカの対中貿易赤字は4192億ドルと過去最大に達し、米貿易赤字6210億ドルの大半を占めている。
2018年は既にアメリカが対中制裁関税を発動していたが、対中貿易赤字はむしろ拡大している。
これはアメリカが「公式な」関税しか発動していないのに対し、中国は「見えない制裁」を用いているからです。
一説によると中国GDPの8割はいまだに国家や共産党が関与している企業で、少なく見ても5割超だという。
中国最大のiT企業、最大の自動車メーカー、最大のエネルギー企業など有名企業は全て国営か、共産党が経営に関わっている。
また中国の自動車販売は地方政府や公営企業が購入する割合が高く、特にバスやタクシーのほとんどは公的企業が購入している。
こういう国では党や中央政府からの電話一本で容易に、特定の国からの購入を控えるよう指示することが出来る。
2012年の抗日デモを考えれば分かるが、公的企業向けの日本製品売り上げを半減させることも、倍増させることもできる。
最近では韓国がサードミサイル配備で「見えない制裁」対象になり、サムスンやヒュンダイの売り上げが激減した。
トランプが中国に課した「公式な関税」の何倍も、中国は見えない制裁によってアメリカ製品を排除した。
中国は西側経済ステムから排除される
トランプの対中制裁でむしろ対中貿易赤字が増えてしまい、中国はこれでトランプ外交が失敗し制裁を辞めると考えたようです。
だがトランプはそんな甘い人間ではなく、中国の「見えない制裁」に激怒して25%の制裁関税に踏み切った。
大方の見方では、「トランプの対中政策は失敗したので、妥協するだろう」そこまではやらないのではないかというのが大勢でした。
米中貿易でアメリカの輸入額が5000億ドルで、そのうち2000億ドルに25%関税を掛けたので、4000億ドル程度には減ると考えられる。
すると中国がアメリカからの輸入をゼロにしたとしても、最初から1000億ドルしか輸入していないので、アメリカの制裁が上回る。
トランプとしてはこれで互角という事で、中国がどうあがいても1000億ドル以上、アメリカからの輸入を減らせない。
次いでトランプは日本にも対中制裁に参加するよう求め、安倍首相はなにがしかの対中制裁に応じるでしょう。
そうしないとアメリカの次の矛先は対日貿易赤字になるので、少しでも恩を売っておいた方が良い。
中国はアメリカとの輸出入すべて合計しても6000億ドルで、この金額は中国GDP13兆ドルの4.6%に過ぎない。
仮に米中貿易が2000億ドル減少してもGDPの1.5%なので、一見するとほとんどダメージが無い。
だがアメリカを中心とした西側陣営のシステムから排除された中国は、冷戦時代のソ連と似たような立場になる。
「ソ連経済圏」が幻だったように、「中華経済圏」も年々縮小していく可能性が高い。