ソフトバンクは5月9日に2019年3月期連結決算を発表したが、内容を巡って経済メディアが物議をかもしている。
決算内容は売上約9.6兆円、営業利益は2.3兆円で81%増、純利益は36%増の約1.4兆円ですべて過去最高だった。
ところが一つ一つを検証すると、過去最高益どころか利益はなかったのではないかという内容になっている。
問題その1はアメリカの通信子会社スプリントで、孫社長は黒字経営だと言っているが、米メディアは「経営存続は困難」と言っている。
問題その2は10兆円ファンドで、会計では購入資金や出資者への分配金を含めず、含み益を利益に計算しているようです。
例えば個人投資家が10万円で借金で株を買ったとして、購入資金や借入金利を計算せず、配当金と含み益だけを計算したらどうでしょうか。
実態と大きく乖離してしまうが、今回のソフトバンクグループの決算は、こういったものに近い。
ファンド事業の含み益が1兆132億円とされているので、純利益1兆4111億円の7割以上が含み益によるものだったようだ。
含み益を計上する一方で購入資金は計算せず、サウジなど出資者への配当支払いはどうなっているのか分からない。
これを個人投資家がやったら、実際に現金を手にしていないのに「儲かっている」と周囲に触れ回っているような事になる。
含み益を確定益に変えるには決済するしかないが、日々変動する株式のままなので、明日はどうなっているか分からない。
孫社長は出資者の利回り(内部収益率)が45%に達していると語ったが、ソフトバンクがそれだけの配当金を支払ったという意味なのだろうか?
おそらくこれも「含み益」の類で、何の保証もない架空の利益に過ぎないと思われる。
「含み益」は利益なのか
決算ではソフトバンク・ビジョン・ファンドによる営業利益が1.25兆円、グループ全体で2.35兆円となっている。
グループ全体の有利子負債は14兆円を超え、今後も事業拡大で増え続けると予想されている。
一方で孫社長は第二ファンド立ち上げを予告しており、実現するとファンド総額は20兆円に達する。
ファンドが「含み益」なら良いが、リーマンショックやitバブル崩壊のような事が起きると、ファンド保有株価は下落する。
すると「含み損」によってグループ全体の決算は赤字になってしまうが、おそらくその時は「含み損」を除外するかも知れない。
孫正義社長はヤフーやソフトバンクについて「どうでもいい」と言い、ファンドで頭が一杯だと話している。
ファンド以外の営業利益は約1.1兆円だが、米スプリント事業でもつじつまが合わない部分があると指摘されている。
米スプリントは先日米当局にTモバイルとの合併を改めて否定され、米メディアは悲観的な見方をしている。
スプリントは顧客減少が止まらず経営悪化している筈なのに、ここでも会計上は黒字になっている。
以前米メディアが書いていた記事によると、ソフトバンクは米国に子会社を作ってスプリントの設備を高額で買い取った。
そして買い取った設備を格安でスプリントにレンタルするような手法で、合法的に会計を良く見せているという。
これも「含み益」と利益だと言い張るのと同様に、実際はどうなんだか分からない。
ソフトバンクは電話事業やヤフーなど関連会社を株式上場したり、くっつけたり剥がしたりしている。
意図は分からないが経営実態が分かりにくくなり、赤字が見えなくなったり上場して現金を得られるのかも知れない。
このようにソフトバンクグループの中身は、外部からどんどん見えにくくなり、実態がつかめなくなっている。