アメリカが迫る「国際ルール」とは
米中貿易対立は米トランプ政権が6月1日から、中国からの全輸入品に25%関税を掛けると発表し新たな局面を迎えた。
中国側も反発し米国からの輸入品600億ドルに報復関税を掛けると予告している。
一見両国は対等だが米国は中国から5000億ドル輸入し中国は1000億ドルなので、最初から勝負になっていない。
米国はさらに、中国からの全輸入品への関税を50%や100%に上げる事もできる。
一方で米側は中国に国際ルールを守るよう呼びかけているが、中国側は拒絶している。
この「国際ルール」とは事実上人民解放軍や共産党と一体のファーウェイやアリババが「民間企業」のように振舞っているのを差している。
アリババやファーウェイの最高意思決定機関は実は中国共産党であり、中国のすべての機関は社内に「共産党」が存在している。
たとえばファーウェイ社内にはファーウェイの共産党支部が存在し、中央からの指令に会社が従っているかチェックしている。
もし企業が党に背いているのが分かれば、社長や経営者が突然失踪したり「遭難」したり、事故にあう事になっている。
近年中国では資産数兆円もあるような資産家や、大手企業の経営者が失踪し、後で公安に連行されたのが発覚したというような事が多い。
ファーウェイなどは中国軍と一体であり、軍や共産党のためにスパイ活動をしているとされる。
中国は過去10年に100兆円以上の国家予算をIT開発に投じ、ファーウェイが国家予算を使って実際の技術開発を行った。
中国は「資本主義の仮面を被ったソ連」だというのがアメリカの主張で、大半は事実です。
人民元安で通貨危機の可能性
中国は意外にもアメリカとの交渉を拒否する姿勢を見せていて、通貨の人民元で競争力を保つと見られている。
アメリカが中国に25%関税を掛けるなら、人民元を25%安くすれば米国での価格は同じになります。
2019年に入って人民元が下落しているのは、実際元安に誘導したからでしょう。
人民元は2008年以降は1ドル6から7元の間で維持されていて、2008年以前は1ドル8元以上もありました。
2008年は北京五輪が開催されリーマンショックが起き、中国の自律的成長が止まって公共投資による借金経済に移行しました。
2008年に50兆円の景気対策した中国は、その後毎年公共投資を増額せざるを得なくなり、今では年300兆円以上に達しています。
これはある種の薬のように、最初は少量で効くが慣れてしまい、どんどん量を増やすのと似ています。
人民元を安くすれば競争力は高まるが、外国への借金が増えてしまい、インフレで景気悪化し国民生活もダメージを受けます。
中国の人民元は国際通貨ではないので、外国に多額の借金をしてドルを調達しているが、その膨大な借金が元安で返済できない恐れがある。
一度このような通貨不安が認識されると、1997年のアジア通貨危機と同じで、投機筋による売り浴びせが起きます。
中国は「1ドル7元以下を維持する」と宣言したので、人民元安はこれが限界になる。
もし1ドル7元を防衛できない事態になったら、本格的に人民元の売り浴びせが起きるでしょう。
中国の外貨準備は公称3兆ドルなのだが、大半はどこにあるのか不明で、どこにも存在しない可能性が高い。