米トランプ大統領は2019年7月26日、WTOで裕福な国が発展途上国として優遇される制度を廃止するよう求めました。
求めただけでなく90日以内に改革が行われなければ、米国独自の対応を米通商代表部(USTR)に指示しました。
トランプ大統領は既に大統領令に署名しており、メキシコ、韓国、香港を名指しして通商代表部が「あらゆる措置を取る」のを求めている。
大統領令によるとWTO加盟国の3分の2が自身を発展途上国と主張しているが、その中にはGDPで世界2位の中国や10位の韓国も含まれている。
シンガポールは一人当たりGDPが日本の1.2倍だが発展途上国と主張しており、多くの先進国より平均所得などが高い。
韓国は事あるごとに自国を先進国だと主張し、先進国扱いを求めるが、WTOでは発展途上国だと主張している。
WTOは発展途上国は貿易自由化しなくて良いという例外にしているが、発展途上国かどうかは自己申告になっている。
日本やアメリカが発展途上国だと主張したら認められるのかは分からないが、中国と韓国は認められている。
トランプは90日という期限を設ける事で中国やWTOに圧力をかけ、実行しないならWTO脱退も選択肢としている。
折しも日本は韓国と貿易優遇措置を巡って対立し、韓国を半導体素材輸出優遇国から除外し、軍需製品輸出のホワイト国からも除外しようとしている。
どちらかといえばWTOの途上国優遇で被害を受けてきたのはアメリカより日本で、トランプに協力してWTO改革を求める可能性がある。
欧州は米国と自動車や農産物貿易で対立しているが、途上国優遇では利害が一致するので協力するかも知れない。
途上国優遇の実態
WTOで途上国と自己申告した国は、先進国から関税免除などの優遇を受け、貿易自由化の義務を免除される。
例えば韓国は途上国として日本に輸出する時は関税を優遇される一方で、日本からの輸入は途上国として閉鎖している。
WTOの制度改正には全164の加盟国の全会一致が必要で、一か国でも反対すればいかなる改正もできない。
このような制度にした理由は中国など反西側の国に加盟してもらうため、事実上少数国が主導権を握る制度としました。
そのせいでWTOで多数決が機能せず、中国のような少数の反対派が有利になっている。
中国の途上国扱いは認めないと163か国が決議しても、当の中国自身が反対すると何も議決できません。
アメリカはこうした制度に不満を唱え、協力を拒否しているため任命すべき役員の指名もできなくなっています。
一国の反対票が他の全加盟国の票を上回る否決権を持つのは戦前の国際連盟や現在のアセアンと同じ制度です。
どちらも機能不全に陥って何も決められなくなり、国際連盟は崩壊し、アセアンは中国に従うだけの組織になっている。
中国や韓国やアジア諸国はこうした不公正制度を利用して貿易利益を得てきたが、先進国はその分不利を受けてきた。