北は97年危機に匹敵する苦境
韓国中銀の推計によると2018年の北朝鮮GDP成長率はマイナス4.1%で、1997年以来最悪だった。
1997年といえばアジア通貨危機で韓国やタイが国家破産し、日本では山一證券が破産した大変な年でした。
同時に北朝鮮は核開発でアメリカと対立して経済制裁を受けていて、両方でダメージを受けました。
1994年に金日成が死去して金正日が最高指導者になったが、この男はアメリカとの対立を好み「瀬戸際外交」を行った。
瀬戸際外交とはわざと危機を起こして相手国を譲歩させるやり方で、弾道ミサイルを発射して「経済援助しないと火の海にするぞ」などと言います。
日米韓は瀬戸際外交に屈してお金を払ってきたので、北朝鮮はますます調子づいて瀬戸際外交を進めています。
95年から97年にかけて北朝鮮は水不足などで作物が不作になり、100万人以上の人が飢餓でなくなったと推測されています。
金正日が指導者になったとたんに飢餓が起きるのは不自然なので、強制労働に農民を従事させた結果、収穫量がゼロになる村が続出したと考えられている。
97年の飢餓が起きたのは金正日に代替わりした3年後、金正恩は2011年に最高指導者になったが全権を掌握したのは2016年からなので、今年が3年目になります。
初代の金日成は1948年に初代首相になり、1950年に突然ソウルに進軍し朝鮮戦争を起こしています。
北朝鮮の新たな指導者は就任した数年後にかならず、核危機やミサイル危機や戦争を起こしています。
これは古典的な権力掌握方法で、対外的に危機を作り出したり戦争をする事で、国内の自分の権力を高めることが出来ます。
経済制裁の効果が北に打撃を与えている
北朝鮮は2017年の成長率もマイナス3.5%だったが前年の2016年は3.9%のプラス成長で、17年ぶりの好景気に沸いていました。
北朝鮮は2016年1月6日に核実験、2月7日に弾道ミサイルを発射し、2016年3月2日に安保理制裁決議を受けました。
この後も北朝鮮はミサイル発射を繰り返したので、16年11月30日、17年6月2日、17年8月5日、17年9月11日、17年12月22日に新たな安保理制裁決議が行われた。
制裁は2017年に強化され、北朝鮮は現在あらゆる輸出入を禁止され、完全に孤立した状態にある。
韓国中銀によると18年の貿易は輸出は2億4000万ドル(約260億円)と86%減、輸入も31%減だった。
これを韓国と比較すると、韓国の2018年の輸出は6,051億ドル(約65兆円)、輸入は5,351億7,200万ドル(約58兆円)だった。
2018年の北朝鮮GNI(国民総所得でGDPに近い)は約3.3兆円(韓国中銀推定)なので、輸出依存度は0.8%程度に過ぎない。
韓国の貿易依存度68%に対して北朝鮮はせいぜい2%未満、制裁前も5%を超えてはいなかったでしょう。
現在の韓国と北朝鮮の経済格差は貿易によってもたらされたもので、北は極端な自給自足生活をしている。
おそらく農村では飢餓が発生している筈で、農薬や肥料が制裁されているので農業生産も落ち込んでいる。
冷静に考えれば北朝鮮の指導者は政策転換して安保理制裁を解除してもらうべきだが、その可能性は少ない。