日米貿易交渉は日本の譲歩が決まっている
参院選で合意を延期していた日米貿易交渉は、8月23日に大筋合意に達したと発表された。
日本が求めていた自動車関税撤廃は見送られたが、トランプが主張していた自動車制裁関税も見送られた。
農産品では日本が米国産牛肉にかけている38.5%を9%に下げるなど、TPP加盟国に近い水準にする。
日本が求めていた工業製品の関税については、後日発表するとして米側が何らかの譲歩をする模様です。
一方でアメリカが求めていた農業分野の開放では、やはりTPP加盟国並みの待遇とする。
比較すると日本の譲歩が大きくアメリカの譲歩は少ないが、日米貿易は元々日本の輸出超過に偏っている。
日米貿易は年間4兆円から8兆円のペースで日本の貿易黒字で、2018年は約6兆5千億円の貿易黒字でした。
貿易収支と貿易外収支を合計した経常収支では、2018年は約12兆円日本の経常黒字でした。
アメリカが問題にしている経常赤字は2018年に約4700億ドル(約50兆円)だったので、米国の経常赤字の1/4は日本が原因でした。
米国の2018年貿易赤字は約8800億ドル(約95兆円)で日本が占める比率は7%弱、対日では貿易より経常赤字のほうがずっと大きい。
ところが日米が80年代から90年代に協議して始めた自動車の現地生産などが、日本の対米経常黒字の原因になっています。
トヨタが愛知県ではなくカリフォルニアで生産すると貿易輸出は減るが、代わりに日本の経常黒字が増える仕組みです。
日本は戦術的譲歩で賢く負ける
アメリカの要求に応じて日本企業がアメリカに進出したりアメリカに投資すると、やっぱり日本の経常黒字が増えてしまいます。
結局日米どっちで自動車を生産しても、貿易輸出か貿易外の利益になるかの違いだけで、お金は日本に入ってくるのです。
ではトランプが言うように関税で日本車を締め出してカリフォルニアの日本車工場も閉鎖したらどうなるのか?
アメリカ人は1950年代と同じようにビッグ3の自動車を買って満足するのか、大いに疑問です。
日米貿易協議は1980年代からずっとアメリカが要求し日本が譲歩したので、日本が損をしたように見えます。
だが事実は「日本の儲けすぎ」にアメリカが文句を付けているので、ここは小出しに譲歩して日米貿易を続けた方が日本の利益になる。
もし中国のようにカッコ良く要求を突っぱねたら、日米貿易そのものができなくなり、日本は1941年のような危機に陥るでしょう。
日本が年間12兆円も儲けている限り、アメリカから是正を要求されるのはやむを得ない。
アメリカは日本から輸入しなくても韓国や中国やEUから輸入すれば良いが、日本はアメリカと断交すれば輸出先がなくなる。
アメリカの要求を完全に突っぱねたロシア、北朝鮮、イランなどの経済が破綻しているのを見れば、戦術的譲歩こそ得策なのが分かる。
かといって無制限に譲歩する必要はなく、医療や保険制度や福祉、年金など守るべき部分は守ればいい。