米中の制裁報復合戦
トランプ米大統領は2019年8月23日、アメリカ企業が中国から撤退して米国に回帰するよう要求するツイートをした。
この日中国商務省は米国から輸入する750億ドル相当に、5%から10%の報復関税をかけると発表した。
トランプ大統領は中国への制裁第4弾として、9月1日から新たな制裁関税を課すと予告していた。
大統領の撤退命令は法的なものではないが、中国で生産しているアメリカ企業の製品に関税がかけられると打撃を受ける。
GM、アップル、ボーイング等が打撃を受けるとの連想から、一時株価が下落する場面もあった。
米国は9月1日に、中国からの1250億ドル相当の輸入品に対して、15%の追加関税を課した。
今回の対象は過去の制裁で対象から除外した電子部品の多くが含まれている。
スマホ、ノートPC、スマートスピーカー、スマートヘッドフォン、おもちゃ、衣類、靴なども含まれる。
5000品目以上の約1700品目は9月1日から追加関税が実施され、残りは12月15日から適用される。
中国で生産する自社製品が制裁対象になった米国企業は、東南アジアなど中国以外への生産移転を急いでいる。
米国は中国が不公正貿易を是正していないとして制裁関税を課し、中国は米国が一方的に制裁を課したとして報復した
互いに相手を信用できないとして交渉は行き詰まっているが、一方で非公式協議も行われている。
中国がWTOに提訴しても効果は望めず
9月1日に米国の対中制裁関税第4弾が実施された翌日の9月2日、中国商務省は世界貿易機関(WTO)に米国を提訴すると発表した。
中国側は大阪のG20米中首脳会談で制裁関税を掛けないと約束したのに、7月には再び制裁関税を課すと発表したと不満を訴えている。
トランプ大統領は中国が約束した不公正貿易の是正が実行されていないとして、中国が合意を破ったと主張している。
WTOに訴えると自動的に受理されて小委員会で審議されて決定が出るが、敗訴した側が訴えると上級委員会で審理される。
その上級委員指名が米国の反対で行われておらず、7名のうち3名(アメリカ、中国、インド)しか居ない。
2019年12月10日にはアメリカとインドも任期切れになり中国上級委員は2020年12月10日までとなっている。
アメリカはWTOが中国に支配されていると強い不満を漏らし、改革されないなら脱退するとしている。
日本政府も日韓問題でWTO改革が必要だとしてアメリカに賛成していて、今年か来年には大きな動きがあるでしょう。
現在のWTOは訴えを起こしてから解決するまで2年はかかっていて、もっと長期化する可能性が高い。
WTOで仮に中国が勝訴しても拘束力がない勧告が行われるだけで、勧告を受けても何かをする義務はない。
ただ勧告を是正しないとWTOは勝訴した国に報復として同等の措置を認めるので、何らかの是正措置を取るのが通例になっている。
是正措置には抜け道も用意されていて、訴えられた制度は撤廃したとしても、別の制度で同じように制裁を課すことが多い。
ロシアは「WTOで負けても抜け道制裁をする」と公言しているので、実際には敗訴しても痛くもかゆくもない。
これは日韓関係にも当てはまり、仮に韓国が提訴して勝ったとしても、日本はまた別な名目で貿易制限すれば良い