デフレ期から日本では生産性という言葉が良く使われるようになり、日本は先進国で最も生産性が低いなどと言われている。
生産性が高いのは良い事とされるが、生産性にはいくつかの種類があり、一般的には労働生産性が良く使われる。
労働生産性は1人の労働者が一定時間に生み出す価値(金額)の事で、時給や時間あたりの成果に近い。
日本の労働生産性が先進国最低だった大きな理由がサービス残業で、仕事をしているのに1円も稼いでない状態です。
サービス残業の間労働者は何も生み出していないことになり、8時間で帰る人と16時間働く人の報酬が同じなら、給与から計算した生産性は半分になります。
労働生産性で世界トップクラスなのはドイツだが、現在のドイツは先進国で最も労働時間が短く、同じ価値を短時間で生み出している。
日本とドイツの国民一人当たりGDPはそれほど変わらないので、結局違うのは労働時間とサービス残業です。
日本企業でよく言われるのが「1分の遅刻にも煩いのに、何時間でも残業させる」ルーズさで、終業時間で見ると世界で最も時間にだらしがない。
勤勉でまじめとされる日本だが、計算してみると日本人は意外にだらしがなく、時間を守れないのが分かる。
良くあるのが企業がちょっとした用事で下請けや立場が弱い人を呼びつけて、無償労働をさせる。
以前ヤ〇ダ電機でメーカーから出向した人に販売員をやらせ、無料労働者として使っていたことがあった。
今問題のコンビニ店長では、オーナーや店長の弱い立場に付け込んで、過労死するまで連続で働かせた事もあった。
日本人が時間に几帳面なのは「自分にメリットがある時」だけで、他人の時間を浪費する事にはルーズなのです。
生産性向上で農村は貧しくなった
もうひとつの生産性問題は農業の生産性で、こちらは低すぎるのではなく「高すぎる」事が問題を引き起こしている。
一種の都市伝説として言われているのが、日本の農業は効率が悪く高コストだから外国に対抗できないという定説です。
実際には日本の農業がコストで他の先進国に負けているのは、トウモロコシや大豆や小麦など低品質でも良い大量生産穀物だけです。
アメリカの地平線まで続く農地から生産される穀物には絶対に敵わず、さらに安価な家畜用穀物を餌にする畜産でも日本は敵いません。
だが人間が食べる品質が重視される農作物、たとえば野菜などでは日本が圧勝で、実は米でも日本のほうが低コスト高品質です。
アメリカでは農家の収入に50%の政府補助金を出しているので、カリフォルニア米の補助金なしの価格はコシヒカリよりも高い。
マスコミが褒めたたえるフランスの農業は農家収入の5割から9割が補助金で、ブドウ農家は国家公務員のように国から給料を貰って生産しています。
北欧でも英独でもすべて同じで、欧米の農作物が日本より安いのは、政府が補助金で安くしているからです。
日本農業の問題点は「生産性が高すぎる」ことで、農業という産業は生産性を上げるほど貧しくなります。
工業製品なら今まで100円で作っていた製品を10円で製造できるようになったら、売り上げが100倍増えて利益は10倍以上になるでしょう。
だが農作物は値段を下げても販売量が変わらないので、生産性を上げてコストを安くしたら、その分売り上げや収入が減ります。
ある村で合計1億円の農作物を作っていたが、生産性を上げると売り上げ5000万円になり、機械化で人手が不要になり半分が失業します。
日本のすべての農村は実際にこうなっていて、農業の生産性が高まるほど農家収入が減って農村は貧困化し人口が減少しています。