三菱航空機は9月6日、米メサ航空とスペースジェットM100を100機納入する覚書を締結したと発表しました。
この覚書に拘束力はなく、新車発売前の予約注文のようなもので取り消すこともできる。
両者は正式な契約書を交わす交渉に入っていて、近く合意に達すれば発表される。
米メサ航空はユナイテッド航空などから地域運航を委託されていて、アメリカ短距離路線の多くは同様の方式になっている。
100機の受注が確定すると4000億円の取引になり、未だに売り上げゼロのMRJ事業に朗報となる。
MRJは今までに約400機を受注したが5度の納入遅れでキャンセル騒動も起き、2年以上新規受注がなかった。
今回覚書を締結したのは70座席型のM100で、従来型の90席級のM90はやはり受注を獲得できていない。
この理由はアメリカ航空業界の労使協定にあり、大手航空会社は76座席以上の航空機を他社に業務委託できない。
これでは90席のMRJはアメリカで売れないので、急遽座席を取り払って70座席にしたのがM100でした。
同クラス他社のライバル機は胴体を短くして座席数を減らしているが、MRJは1人当たりの面積を広くして座席数を減らした。
正直言って胴体を切り詰める改良をする時間も余裕もなく、応急措置で座席を取っ払っただけなのだが意外に好評のようです。
MRJ90は2020年夏に初号機を納入しなくてはならないが、型式証明(TC)の取得が大幅に遅れている。
最大の敵は来年の納期?
型式証明(TC)取得が遅れた理由は安全性などの設計変更で、変更の理由はアメリカの安全基準が強化されたからでした。
安全基準は年々強化されているが、ライバル機は既存機種の改良であるため旧基準が適用され、MRJは完全な新型機のため新基準が適用される。
嫌がらせのようにも思えるが、こうした事も航空機事業で成功するために超えなくてはならないハードルです。
これ以上型式証明(TC)取得が遅れると6度目の納入延期が避けられなくなり、補償問題やキャンセルの懸念が生じる。
親会社の三菱重工はライバルであるボンバルディアのCRJ事業買収を決め、将来はMRJ事業と統合される。
ボンバルディアは小型ジェット旅客機市場で3割以上のシェアを持っており、世界で約1900機が使用されている。
最初の引き渡しは1996年だったので、顧客をMRJに転換させることができたら1900機が売れ、今までの受注と合わせて2500機が売れる。
MRJは度重なる遅延とコスト増で採算ラインは1500機になっていると伝えられている。
三菱航空機はMRJと同クラスの小型ジェット機は、今後20年間で5000機が売れると試算している。
ライバルメーカーは次々に撤退や縮小したので市場の過半数を得るのも可能だが、それにはまず初号機納入し生産を軌道に乗せる必要がある。
ブラジルのエンブラエルは採算性の低い100席未満のジェット機から、100席超のジェット機に移行しMRJとの競合を避けようとしている。
中国やロシアにもMRJと同クラスの小型ジェット機が存在するが、国際市場では相手にされていない。