北朝鮮の金正恩と親密な関係を築くトランプ大統領の周辺で、ボルトン大統領補佐官だけが北朝鮮強硬派だった。
2018年6月12日にシンガポールで初の米朝首脳会談が行われ、トランプと金正恩が「友だち」になってしまう悪夢が起きた。
前年の2017年に北朝鮮は毎週のように弾道ミサイルを日本海に撃ちまくり、アメリカは空母を派遣するなど空爆も辞さない姿勢を取った。
だが2018年になって韓国が仲介して北朝鮮とアメリカが急接近し、米朝首脳会談で直接交渉をおこなった。
首脳会談でトランプは北朝鮮を褒めたたえ、「経済発展して先進国になる」などとツイッターに書き込んだ。
一方で北朝鮮の核開発やミサイル開発にはほとんど触れられず、具体性のない半島非核化が一言盛り込まれただけだった。
日本を無視して北朝鮮と取引したトランプ政権に日本政府はうろたえたが、政権内で日本の味方だったのがボルトン大統領補佐官だった。
ボルトンはジョージブッシュ政権でで国務次官を務め、9.11後の対イラク戦争も主導した右派政治家で知られている。
トランプ政権でもイランやロシアやシリアに強硬策を提言し、北朝鮮にも安易な妥協をしないよう提言した。
2019年2月27日に再び米朝首脳会談が行われたが、ボルトンの提言に従ってトランプは北に核査察と核放棄を要求し会談は決裂した。
日本が望んだ通りの展開で、再びトランプは強硬姿勢に戻るかと思えたが、この事件でトランプはボルトン解任を決めたと言っている。
北朝鮮は何度も名指しでボルトン解任を要求し、ボルトンを解任しない限り米朝会談を行わないと言ってミサイル発射を行った。
米朝接近は日本の悪夢
ボルトンのせいで金正恩が怒ってしまい友達を失うところだったと言って、北朝鮮の求めに応じる形で解任した。
トランプ政権は日本を取るのか北朝鮮を取るのかがボルトンを留任するか解任するかに集約され、結局トランプは解任した。
今までトランプと金正恩の接近は、高度な外交判断による「演技」という見方も出来たが、そうでは無いのが分かった。
米国は現在中国と対立していてロシアとも対立しており、中ロ陣営の一員である北朝鮮を離反させるのは外交の定石と言える。
トランプは多少のアメを与えて北朝鮮を懐柔して中ロに打撃を与えるような、外交政策のようにも見えた。
例えば米ソ冷戦でアメリカが劣勢だった1972年2月21日、ニクソン大統領が北京を電撃訪問し中ソを分断した。
これが中国の経済発展の始まりであり、確かにソ連は滅んだが中国を強大化させた世紀の大失策でもあった。
トランプは下手をするとニクソンのように北朝鮮の核武装やミサイルを容認し、経済援助や軍事支援までしかねない。
日本にとって危ういのはトランプが北朝鮮の核開発を容認していて、ミサイルもアメリカに届かなければ問題ないという態度を取っている点です。
日本人拉致についても北朝鮮に強硬だったのはボルトンだけで、トランプ自身は何の関心も持っていない。
日本としてはアメリカが中国や北朝鮮と対立してくれるほど好都合で、米ソ冷戦時代の再現がもっとも望ましい。
世界が中ロ陣営とアメリカ陣営に分断されれば、日本はアメリカにとって最重要同盟国になり再び大国になれる。
逆に悪夢はアメリカと中ロや北が親密になることで、アメリカにとって日本は「友だちの悪口を言うだけ」の存在になる。