20世紀の日本は輸出大国と呼ばれていて、戦前戦後を通じて国内で生産した製品を外国に輸出する経済でした。
だがよくよく考えてみるとこれはおかしな話で、輸出の対価として貰えるのはドルという紙切れに過ぎません。
昔は金本位制でドルと金を交換してもらえたのだが、今は印刷すらしていない「電子マネー」のようなものに過ぎません。
自動車とか工作機械を輸出して得られるのは電子マネーに過ぎないドルなので、このままでは日本の大損です。
輸出した国は受け取ったドルを使って日本に必要な製品や資源や技術などを買い、輸入することで利益を得ています。
自動車1台を輸出して2万ドルのドルを貰ってもその段階では日本の損で、2万ドルで食料とかスマホを輸入して初めて儲かります。
輸出とは自国で生産した物を、他国で生産したもの(やサービス)と交換する行為なのだと言えます。
鉄鉱石などの資源を自動車に加工して輸出すると何百倍もの付加価値が産まれるので、それだけ有利な交換ができます。
輸出国は交換して輸入する事で利益を得ているので、輸出だけして膨大な貿易黒字をため込むのはあまり意味がありません。
日本の貿易と貿易外収支を合わせた経常黒字は年間約20兆円で、言い換えると毎年20兆円のお金が国内で利用されず余っていることになります。
この20兆円は外国で再投資されてトヨタや日産の工場を建設したりしているが、とりあえず日本人の役には立っていません。
貿易黒字や経常黒字をいくら増やして喜んでいても、輸入することで使わなければお金を捨てているようなものです。
黒字をため込んでも日本は豊かにならない
膨大な貿易黒字や経常黒字をため込んでいる国は、自国の労働力で他国に無料奉仕しているようなものです。
日本が安い価格でアメリカに輸出しているのは、日本人が低賃金でアメリカに奉仕しているようなものです。
そしてこれが観光産業の大問題でもあり、外国人観光が多い国は自国の労働力で外国人にサービスを提供しています。
日本が外貨不足で苦しんでいる発展途上国なら、観光で外貨を稼ぐ必要があるが日本は年20兆円も「外貨が余っている」情況です。
外国人観光客は日本で6兆円ほど消費したそうですが、経常黒字としてため込み何も活用されません。
日本の外貨準備は1.3兆ドルで対外資産は1000兆円超、対外純資産は340兆円に達し、これだけの金が日本国内で活用されず国外に流出しています。
外国人観光でもっと黒字を増やしてもドルのまま外国で運用されるだけで、日本は何も利益を得る事はできません。
輸出して外貨を稼いだら、外貨で何かを購入して輸入する事で日本の資産が増えるが、ドルを持っていても何も得られません。
輸出でため込んだドルが余って仕方がないので、政府は毎年アフリカや新興国に莫大な経済支援をしている。
ドルが余っているなら何か輸入して国内で活用するべきだが、それもしないので経常黒字分の20兆円を捨てているのと同じになっている。
日本の経済専門家は「貿易黒字が増えたから日本が儲かった」「赤字になったから損をした」のように幼稚な考えしかしていない。
そうではなく年間何十兆円黒字でも、受け取ったドルを活用しなかったらその黒字を捨てているのです。