ガソリン車禁止でインドの自動車産業が大混乱
10年ほど前にBRICsという言葉が流行り、現在の先進国に変わる次世代の超大国になるともてはやされました。
BRICはブラジル、インド、チャイナ、ロシアの頭文字で、信じがたい事だが当時経済が絶好調だった。
いずれも国土面積が広く人口大国で資源大国でもあり、当時は原油価格が高騰し資源輸出国は儲かっていました。
消費も活発で先進国から人口大国に活発な投資が行われ、4か国は無限に成長して日米欧を抜くように見えました。
BRICsの減速は2008年のリーマンショックからで、2010年代に入ると4か国すべてが不況になった。
2000年代の熱狂が収まると資源価格が下落し、資源しか売る物がないロシアが最初に脱落した。
プーチン大統領は劣勢を挽回するためウクライナや中東で軍事攻勢をかけたが、やればやるほど国際的に孤立している。
次の脱落者はブラジルで、2016年リオ五輪の時には既に経済がおかしくなっていました。
ブラジルの経済成長率は2017年に約1%で、これはデフレ後遺症の日本と同じでしかありません。
中国も2008年の北京五輪が成長のピークで現在は莫大な借金をして、借金を浪費してGDPとして計上しているだけです。
100兆円の借金で20兆円のGDPを「買っている」ような状況なので、ぶっちゃけた話お先真っ暗です。
インドの2017年成長率は6.6%で平均しても5%以上の高い成長率を維持してきたが、2019年になって異変が起き始めている。
経済失策で自動車が売れなくなった
インドの自動車販売は5カ月連続で2桁減少、8月は前年比41%減という惨憺たる有様になっている。
きっかけは政府の大失策で2016年から17年にかけてイギリスや中国などが次々にガソリン車廃止の方針を打ち出した。
欧州のほとんどの国は口先で廃止するというだけで実際には何もしなかったが、中国とインドは行動に移した。
中国は2017年からEVへの高額(80万円以上)補助金を出し、HVを含むガソリン車販売には事実上のペナルティを課した。
この結果中国は2018年に自動車販売が減少に転じ、2019年も減少が続いている。
中国はEV以外の車を買うと事実上罰金を取られるので、景気後退とも相まって自動車販売減少を招いた。
インドのモディ首相もなにかカッコいい事を言いたいと思ったのか、17年6月に突然「2030年にEV以外の自動車を禁止する」方針を発表した。
最も急進的な国ですら2040年代にガソリン車の新車販売禁止で、しかもHVとPHVの販売は認められていた。
それをインドは10年後にEV以外の販売を禁止すると言ったので、大混乱に陥りました。
インドの自動車産業崩壊危機
インドの一人当たりGDPはベトナムと同水準の2000ドルで中国と比べても1/3、国内に有力な自動車メーカーは存在しない。
結局日本や外国メーカーがインド向けEVを開発する事になるが、高級車が売れる国ではないので利益は出ない。
インド政府は急速に排ガス基準を強化し、メーカーは10年以内に排ガスゼロを達成しなくてはならなくなった。
この滅茶苦茶な政策で自動車産業のシステムが崩壊してしまい、下請け企業を含む数千万人が失業した。
自動車産業は関連産業のすそ野が広いと言われるが、自動車産業が不況になると負の影響も大きい。
インドの自動車工場労働者の賃金は月給2万円から3万円にすぎず、それも多くがこの1年で解雇された。
インドでトップシェアのマルチ・スズキの販売も急減速し、他のメーカーも打撃をこうむっている。
自動車販売不振によって銀行も経営難になり、お決まりの貸し渋りや貸し剥がしで不況を悪化させている。
銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に取り上げると言われるが、まさにそうした状況になっている。