災害や不祥事や経済危機などが起きると必ず「こうなるのが分かっていてなぜ手を打たなかったか?」と批判されます。
事態が起きて振り返ると「こうなるのは分かっていた」ように見えるが、実際はそうではないような気がします。
2011年の福島原発事故や1995年の阪神大震災でも、地震が起きるのは分かっていたのに何の対策もしなかったと言われていました。
地震がいつか起きるのは分かっていてもいつどこでどの程度の地震が起きるのかは誰にも予想できません。
全ての地震がいつ起きても良いように備えるには、極端にいえば恐竜絶滅を引き起こした巨大隕石衝突にも備えなくてはならない。
あらゆる場所で最大規模の地震がいつ起きても被害が出ないようにするには、あらゆる経済活動を辞めるしかないです。
台風の被害もいつかどこかで起きるのは分かっているが、自分の住む地域で起きると思っている人はいません。
あらかじめ予想していたら危険な斜面の土地に住宅を建てる筈がないので、住民自身が災害を予想していなかったのです。
だが豪雨で土砂崩れになると住民は一斉に「こうなるのは分かっていたのに国や自治体は対策しなかった」と言います。
どこかに怒りをぶつけたいのだと思いますが、自分が予想できなかった災害は県の担当者も予想できないです。
ここにひとつ大きな矛盾があり予め危機を予想している場合は、既に対策が取られているので危機は発生しない。
ここは豪雨だと危ないからと、斜面に防災工事を施していたら台風が来ても危機は発生しません。
事前に分かっている危機は発生しない
経済も同じで、すべての恐慌やショックはまったく予想していないむしろ絶好調の時に発生していました。
話は古くなるが1920年代のアメリカは自動車や飛行機など機械産業が発達し、黄金の20年代と呼ばれていました。
アメリカ人は永遠にこれが続くと思っていたが、1929年のある日株価が大暴落して世界大恐慌が発生しました。
同じパターンは何度も繰り返され、1980年代の日本人は高度成長に酔いしれて日本はアメリカを倒して超大国になると思っていました。
だが好事魔多しで幸せの絶頂だった1989年年末がピークであり、バブル崩壊後は30年間衰退し続けた。
911同時多発テロの前、アメリカは冷戦が終わったことで油断しきっていて、アメリカに歯向かう者など存在しないと思っていました。
あらゆる危機はこのように「危機など存在しない」と思っている時に発生し、人々が危機に備えている時は起こりません。
2019年の日本が直面しているのが消費増税の危機で、メディアや評論家は消費増税で日本経済は崩壊すると言っています。
思い出してほしいのは2014年の消費増税では、日本人全員が「アベノミクスで好景気だから影響はない」と言っていた事です。
1997年の消費増税はその後10年間日本をデフレ不況に叩き込んだが、メディアや評論家は問題ないと太鼓判を押していました。
かえって消費増税で福祉が充実するから景気が良くなると言っていたが、結果は御覧の通りでした。
1989年の消費税開始時はバブル絶頂期だったので、お金が余って使い道に困っていて、「どうやって景気を冷やすか」を日本中が議論していました。
リーマンショック前も世界経済は絶好調で、これならすぐに日本はバブル超えできると言っていました。
このようにあらゆる経済危機は必ず「危機を予想していない時に起きている」ので、危機が予想されている時には起きません。
2019年10月に実施される消費増税で日本は再びデフレ不況になると言われていますが、経済評論家がそう言っている時は危機は起きないと考えています。