ボーイングは737MAXの不具合で追い詰められているが、兆候は数年前からあり、10年以上前から前兆があった。
ボーイングは自前の生産設備や熟練技術者をリストラし、外国から調達した部品を寄せ集めて航空機をつくろうとした。
この製造方法はスマホでは当たり前であり、自動車でもテスラは自前の製造工場を持たず、組み立てだけをしている。
航空機でも欧州のエアバスは多数の国で製造した部品を組み立てているし、F35も国際共同開発でした。
ボーイングはこれら共同開発とは違い三菱スペースジェット(MRJ)のように世界中から購入した部品で飛行機を作ろうとした。
MRJは2009年に型式証明を取得する筈だったが10年も遅れたうえ、もう1年延期する可能性が高い。
ボーイングも寄せ集め部品を組み立てた787で多数のトラブルが発生し、737MAXは2機が墜落している。
737MAXの開発過程で多くの欠陥が指摘されたがスケジュールが優先された結果、問題のある機体が航空会社に引き渡された、
ボーイングはほとんどの正社員技術者をリストラして外注や非正規に置き換えたが、これが開発能力の低下に直結した。
最初の転機になったのは2001年に次期戦闘機選定でボーイングX32がノースロップX35に破れた事でした。
2009年にはオバマ大統領がボーイングF22生産終了を命令し、同時にF35への戦闘機一本化が決定しボーイングは戦闘機から追放された。
ボーイング戦闘機はF4、F15、F/A-18とヒットを飛ばしたが、元々は爆撃機や大型輸送機を得意としていた。
軍用機部門から追放されたボーイング
巡航ミサイルの実用化で大型爆撃機は無用の長物になり、今後新たな重量級爆撃機が開発される予定はない。
空中給油機KC-46を受注したが開発遅延でボーイングは多額の赤字を出し、要するに軍用部門で完全に敗北した。
これでボーイングは旨みのある軍用機部門から撤退することになり、民間機製造だけで利益を挙げなくてはならなくなった。
民間機だけで利益を上げるために大幅な経費削減が迫られ、打ち出したのが技術者全員解雇と外注化だった。
墜落した2機の737MAXはプログラミングミスで操縦を受け付けなくなったが、プログラミング開発したのインド人アルバイトだった。
しかもボーイング社はインドのIT企業に格安で下請けに出し、そのインド人プログラマーには一度も会っていない。
数少ないボーイング社員の技術者たちは、下請けの技術者たちがいい加減な仕事をしているのを知っていたが、上層部は取り上げなかった。
テストでは完ぺきに合格していたからだが、プログラミングや動作チェックも下請けに出してアルバイトにやらせていた。
ボーイングには宇宙部門がありNASAと蜜月関係だったが、民間宇宙会社スペースXに多くのロケット打ち上げが移管されコストダウンが図られた。
スペースXは安ければロシアのロケットも使うなど低コスト化したので、宇宙部門でもボーイングは大きな打撃を受けた。
ボーイングは新型ロケットや有人宇宙船を開発しているが、今すぐ利益を生む商品ではない。
もし民間機部門でも敗北すると、ボーイング社の倒産や分割、他社への身売りなども現実味を帯びてくる。
ボーイング倒産はありえるか
ボーイングのスマホ飛行機は連続墜落という最悪の結果になり、今後のボーイング製旅客機売上への影響も避けられない。
19年12月23日には墜落の責任を取ってデニス・マレンバーグ最高経営責任者(CEO)兼会長を解任した。
12月26日には2006年から相談役だったマイケル・ルティグ上級顧問が年末で退任すると発表した。
こうしている間にボーイングの収益は悪化し財務危機が表面化、キャッシュの不足から下請けへの支払い遅延も起きている。
2016年に部品メーカーのロックウエル・コリンズ社はボーイング社からの支払い3000万ドルから4000万ドル(日本円にして約36億円から48億円)が滞納していると公表した。
737MAXの価格は1機130億円なので(ANA発注分)、旅客機の前半分の部品代すら支払えなくなっている。
ボーイングの利益の3分の2は旅客機販売の売り上げだが、787に続いて737MAXも生産停止し、販売のキャンセルや受注失敗も出ているでしょう。
最近の旅客機納入の7割が737MAXだったので、計算するとボーイングの売り上げは半減し利益は消失した筈です。
ボーイング社は負債を急激に増やして当座をしのいでいるが、金融機関が融資を渋ったら経営危機に発展する。
ボーイングは最近不振とはいえアメリカ唯一の大型旅客機メーカーで、これを失うとアメリカの航空機産業が大打撃を受ける。
そうなる前に米政府は救済するだろうし、ボーイング側は再建策を打ち出すでしょう。