ウイルス騒動でなぜ日経は下落しないのか
2019年末に中国で新型ウイルス騒動があり、中国経済に大打撃を与え世界経済にも影響があると言われている。
いつもなら忽ち円高になり日経平均は大暴落、あっという間にデフレ不況になるが今回はなっていません。
年末からの動きをチェックすると為替相場は新型肺炎発表まえの12月29日に1ドル109円43でした。
1月26日に1ドル108円81をつけたが、29日現在は1ドル109円08と騒動前の水準に戻っている。
日経平均は12月30日に2万3656円だったが現在は2万3379円とやや下落している。
だが新型肺炎発表前の19年11月は2万3000円、10月は2万1000円代だったので、それよりは高い水準にある。
新型肺炎がなければもっと上がっていたのかも知れないが、今のところ為替や株への影響は限定的です。
2002年から2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)では為替レートが大きく変動し、日経平均も下落していました。
SARSが発覚したのは2002年11月27日で、その前のドル円レートは1ドル120円から130円台とかなりの円安でした。
SARS騒動の最中ドル円は115円から120円で推移したが、2002年の前半は130円台、後半は120円台だったのと比べると10円以上円高になった。
日経平均は2002年に9000円から1万円前後だったのが、騒動中は7600円まで下落し、8000円台が多かった。
SARS期間中はドル円は10%程度円高になり、日経平均も10%程度は下落していたと思います。
円高になりにくい構造に変化した
今回の新型ウイルス騒動では、1か月経過した時点で為替相場も日経平均も、騒動前とほとんど変わりません。
これから下落する可能性もありますが、日本経済が危機に強い体質に変化したとも考えられます。
90年代から2000年代の日本経済は「輸出大国」を自負するほど輸出に依存しており、膨大な貿易黒字を持っていました。
2002年の貿易黒字は約800億ドル(約10兆円前後)もあり、最近は1兆円から10兆円以上の貿易赤字です。
その代わり最近は年20兆円前後の経常黒字なので、トータルでは2002年ごろより対外収支は儲かっている。
貿易黒字は物を輸出した金額で、経常収支は海外生産や海外子会社の利益などが多くを占めています。
90年代や2000年代は輸出で売り上げた代金が溜まると、ドルから日本円に換金されて円高を引き起こしていました。
今はトヨタやホンダの米国工場が仮に1兆円売り上げたとしても、米国内や新興国で再投資され日本に戻ってこない。
企業が日本本社にお金を送金したから円高になっていたので、海外で上げた売り上げを海外で使えば円高は起きません。
貿易赤字によって日本に送金されるお金が減り、経常黒字で儲けた金額は海外で再投資され円に交換されない。
この仕組みによって円高が起きにくくなり、日経株価も下落しにくくなっていると考えられます。
もっとも経常黒字の毎年20兆円が永遠に海外にとどまったままという保証もないので、一気に円に交換されると大変な事態になります。
毎年20兆円経常黒字なら10年間で200兆円、それだけのドルが一斉に円に交換されたら1ドル80円以下の超円高になるでしょう。
だが当面そうなることは無く、しばらくは1ドル100円台を保つのかも知れない。