元日産社長のカルロス・ゴーンは保釈中だった2019年12月30日に、自家用ジェットで日本から脱出した。
警察の監視の隙をつき、楽器ケースの中に隠れて税関のチェックをすり抜けるという劇的なもので、世界で大きく取り上げられた。
ゴーンの出生地はブラジルだが父はブラジル生まれで祖父はレバノン生まれ、このためゴーンは複数の国籍やパスポートを持っている。
高校からフランスに移住しパリの大学を卒業し、フランスのタイヤメーカー、ミシュランに就職した。
ゴーンはフランス、ブラジル、レバノンの国籍を持っていて、他の国でも日産から横領した資産を隠しているとされている。
19年末に日本から出国したゴーンはレバノンに「帰国」したが、レバノンは経済破綻などで暴動が起きていていつ襲われてもおかしくない。
経済破綻で銀行が機能停止し、出金業務を行っていないのでゴーンも現金を持っていないと思われる。
日本政府はICPO(国際刑事警察機構)に協力を要請し、ICPOは赤手配書(国際逮捕手配書)をレバノン政府に送った。
アニメではインターポールから銭形警部が派遣されるが、実際には当事国の警察に逮捕を要請する。
この赤手配書(国際逮捕手配書)は「レッドノーティス」と呼ばれ、法的拘束力はなく当事国は要請されても拒否する事ができる。
だがICPO赤手配書を出したことで、ゴーンは主張しているような「政治犯」や罪に陥れられたのではないと保障した事になる。
ICPOは国連機関ではなく独立した組織で、192か国が加盟しレバノンも加盟している。
ICPOの赤手配書の威力
ICPOの赤手配書を無視しても罰則は無いが、レバノン以外の殆どの国は要請に従うので、今後ゴーンはレバノンから出国できない。
仮にブラジルが赤手配書を無視するとしても(可能性はほとんどないが)、事前に保証を受ける事は出来ない。
レバノンに居られなくなったらゴーンは逮捕されるかどうか保証がない状態でブラジルに行くか、ICPOに加盟していない国や地域に行くしかない。
どこかの空港に降り立ったり国境を超えるたびに、ゴーンは逮捕されるかどうか運に身を任せる事になる。
ほとんどの国は日本と身柄引き渡し条約を結んでいないが、多国間の引渡条項は存在している。
ICPOに加盟していない国や地域はほぼロクな国は無く、ATMや水洗トイレすら無いかも知れない。
ゴーンは日本から逃亡した事によって国際指名手配犯になってしまい、かえって不自由になってしまった。
日本で有罪判決を受けた場合、ホリエモンの例だと懲役2年6ヶ月、実際の刑期は1年9か月服役している。
逮捕された2006年1月23日から判決が確定した2011年4月まで6年2か月かかっており、服役期間を含めると8年も社会から消されていた。
刑期を終えて出所後もまともな会社に就職などできないので、2重3重もの長期に渡る罰を受ける事になる。
これがゴーンの主張する日本の司法制度の欠陥で、多くの先進国では短期間しか逮捕されず行動の制限も受けない。
ゴーンは自由を手にするために日本から逃亡したが、かえって不自由になってしまった。
ゴーンは逃亡で社会から消される
ゴーンは日本からの脱出をアメリカの元特殊部隊などに依頼し、数十億円の費用をかけたと言われている。
メディアの報道によるとゴーンの資産は1億2000万ドル(約131億円)から約7000万ドル(約76・6億円)に4割ほど減った。
思ったほどの金額ではなく、残っているドル資産も赤手配書によって差し押さえられる可能性が高い。
ゴーンの現金資産はすべてドルの筈で、アメリカは国際犯罪に非常に厳しく、資金洗浄など絶対に許さない。
国際的な不正資金摘発を911以来世界に働きかけたのはアメリカだからで、「ゴーンだけ特別扱いしよう」というのはあり得ない。
ゴーンが元特殊部隊を動かして脱出したり、レバノン政府を味方に付けられたのは金があったからで、金の切れ目が縁の切れ目になる。
悪くすると何年か逃亡を続けた末に、資金が底をついてレバノン政府に逮捕され、日本に引き渡される。
日本に戻されると最初から裁判をやり直しで今度は絶対に保釈を認められず、逃亡が考慮されて刑期も重くなる。
ゴーンは逃亡に成功したが、何も良い事がなく踏んだり蹴ったりの結末になる可能性が高い。
ゴーンはICPOに国際逮捕手配書の取り消しの訴えを起こすそうだが、認められる可能性はほとんどない。
ICPOの国際手配書には9種類あり、赤は下から数えて最も上で、最も強い手配書という意味になる。
赤手配書を出しておいて本人が抗議したら引っ込めたのでは、今後ICPOの権威は地に落ちる。
国際指名手配犯である限りゴーンはまともな職には付けず、メンツを重んじる自動車メーカーとの接触もない。