数年前金融庁が「老後資金2000万円必要」と発表し国中を騒がせる大問題に発展した事がありました。
この2000万円は必要な平均値なのだが、その平均とはごく一部の特殊な人間を指していました。
「夫65歳以上、妻60歳以上、無職世帯」のモデルケースで毎月の不足額が5万円、30年間で2000万円になるという内容でした。
実際には世帯間の格差があまりにも大きく誰も当てはまらず、もっと多いか少ないかのどちらかでした。
世代別の平均貯蓄額は20代100万円、50代500万円、60代1200万円などとなっています。
50代と60代の格差が2倍以上あるのは不自然で、ごく一部の「超富裕層」が平均値を上げてしまっています。
JSKパートナーズというコンサル企業の最近の調査では、現在の貯蓄額100万円未満が4割を占めました。
調査は10代から50代が対象で、国や大手保険会社の調査などとかけ離れています。
日本の個人金融資産は1800兆円超、人口1人当たり1400万円もの個人資産を保有している超富裕国です。
だが個人資産は一部の富裕層だけに集中していて、現実に街頭アンケートなどをすると「平均100万円以下」のようになる。
先ほどのJSKパートナーズの調査によると資産100万円以下約41%、300万円以下が約15%の合わせて約46%を占めました。
300万円から1000万円未満約23%だが、300万から500万円未満が10%を占め、下の方ほど層が厚くなっています。
一方で資産1000万円以上が約18%を占めていて、彼らが「平均」を引き上げて実態を見えなくしています。
「なるべく長く健康で働く」のが最強
例えば20代で資産100万円以下の人は60代までに2000万円に増やせる可能性はあるが、現実は甘くないでしょう。
今の高齢者は年功序列、高度成長、有り余る国の保護を受けたから巨額資産を築けました。
今の若者から中年は毎年給料が下がり、国は社会保障をカットしており、実力主義と言う勝者総取り社会になっている。
昔は就職して真面目に働くだけで誰でも家を建てて車を買い、家族4人を養う事ができた。
今は『勝者』にならない限り非正規では年収200万円未満、正社員でも手取り400万円未満というところです。
つまり国民の半数ほどは老後資金が不足し、まったく用意できない人も4割くらいになる筈です。
国の年金が破綻することはありませんが金額の大幅増も期待できず、現状維持か減少するでしょう。
マスコミは日本の高齢化を宣伝し危機を煽っていますが、実際には日本の高齢化はもうピークが過ぎています。
高齢化は今の若者が年を取る事なので、第二次ベビーブームの今の50代が最後の高齢者の増加になります。
その後は高齢者の人数がだんだん減っていくので、子供の数が増えれば「少齢多子化」が始まります。
問題は少子化の方であって高齢化ではないので、どこかで出生数は下げ止まって上昇し始めます。
出生数の下げ止まりにはおそらく20年か40年はかかるので、今の若者が高齢者になる頃に反転するかどうかです。
それまでどう生きるかですが、60代から寿命を迎えるまで20年から30年、平均25年間という所です。
生活費や固定費に年300万円かかったら30年間では9000万円、まったくの無収入だと老後に9000万円がかかります。
だが高齢者向けの低家賃住宅でつつましい生活をすると、年200万円や150万円でも生活は可能です。
国民年金満額だと月4万円、プラス厚生年金の収入があり、税金や公的支払いには免除制度もある。
このように考えると「最低限必要な金額」はどんどん下げる事ができ、最終的には無収入資産ゼロでも生きていくのは可能です。
年金を月10万円もらえたら年120万円で、もう少し月数万円の収入があれば足りる計算です。
差が出るのは何歳まで働けるかで60歳で引退する人と70歳以上まで働く人では、その間の収入が何千万円も違ってきます。
資産2000万円の差は高齢までの最後の10年間の労働収入で吹き飛んでしまうので、極論すれば重要ではない。
「なるべく長く健康で働く」のが最強の老後対策と言えるでしょう