F15Jは今の物価で一機375億円だった
替わりにソ連戦闘機を数十年寄せ付けなかった
役に立たない物が最強?
古典的な議論として最も強い兵器は何かというのがあり、盾と矛の矛盾の話に行きつきます。
『韓非子』に出てくる「矛と盾」の故事で、ある商人が最強の矛と最強の盾を売っていた。
客がその矛でその盾を突いたらどうなるのかと聞かれ、答えに困った事になっている。
口のうまい商人なら「両方買えば分かりますよ」と言うかもしれないが、これが矛盾です。
現実の世界では最強の矛と最強の盾は同時に存在でき、実際には戦わなければ良い。
相手が「あの矛は強そうだ」と思って攻撃を思い留まれば、その矛は最強だったことになります。
盾の場合も相手は「あの盾を破れそうにない」と攻撃を思いとどまれば、その盾は最強だった事になる。
現代最強の兵器は核兵器で、みんな核を恐れて攻撃を思いとどまっているので、核保有国が攻撃された事は無い。
ロシアはソ連崩壊で経済が縮小し、今では韓国やイタリアより経済規模が小さくなりました。
それでもロシアは多数の核を保有しているので、アメリカや英仏独を恐れおののかせています。
ではロシアが核を使った場合はどうなるかというと、アメリカを始めNATOの核保有国も一斉にロシアを核攻撃します。
西側の核の方が弾数も多いが、それ以上に運搬手段が優れていて、ミサイルの迎撃もできるのでロシアは廃墟になります。
F15Jは一機350億円だった
現実のロシアの核はそれほど役に立つものではないが、相手がロシアを恐れるので十分に役に立っている。
日本にとって最も有効な兵器は米軍の核で、日本の周辺国は「日本を攻撃すればアメリカと戦争になる」ので攻撃してきません。
これが抑止力というもので、日米安保条約の外だった尖閣諸島や北方領土、竹島などは攻撃対象になっている。
兵器の調達の度に、その兵器は無駄だという議論があり、最近ではF35の値段が高いのが問題になった。
F35Aは今の所1機あたり約150億円だが、当然ながら円安だと高くなり円高だと安くなります。
今まで世界で最も高価だった戦闘機は日本のF15Jで、初期型数機の価格は1機125億円、それまでのF4が25億円だったのでべらぼうな値段でした。
その後量産型は90億円前後に「お手頃」になったが、内閣府によると1980年の物価は現在の1/3でした。
つまりF15Jは現在の物価で初期型は375億円、量産型でも200億円以上しました。
F15Jは一度も実戦に参加することなく退役しようとしているので、まったくの無駄だった事になります。
安い戦闘機が一番無駄
だが兵器が使用されずに終わるのは相手がその兵器を警戒して攻めてこなかったという事でもある。
F15の初飛行は1972年だが、ソ連や中国など東側でF15を上回る戦闘機が登場したのは1990年台も後半になってからでした。
その頃はレーダーやコンピュータの性能が向上したので、戦えばF15はSu27の後継機に負けた可能性があります。
F35が数十億円とか100億円で「高すぎる」という議論でおかしいと感じたのは「安すぎる」の間違いではないかという点でした。
戦闘機のような兵器は敵より強いか、最強か最強でないかが重要で、安くてお買い得な戦闘機は存在しません。
安くて高性能ですごくお得な戦闘機があったら、それは皆が買うので「普通の戦闘機」になってしまいます。
F15はあまりにも高価で誰も買えなかったので、世界最強でソ連戦闘機がブリキのおもちゃみたいに見えました。
敵より低性能か同じ性能の戦闘機が何機あっても態勢に影響なく、敵より優れた戦闘機を「持っているかいないか」が重要です。
もし中国やロシアがF35より強い戦闘機を出したらF35は無価値になるし、仮に一機300億円でも数十年間優位を保てるならお買い得なのです。