アダニ氏とモディ首相(2011年)

第二の中国化するインド
インドのアダニグループを日本の中で例えるなら、旧財閥企業を合わせたうえでソフトバンクや東京電力も合わせたような存在と言えるかも知れない
アダニ・グループはインド14億人の送電線の5分の1を管理し穀物の3分の1を貯蔵しセメント生産量の5分の1、港湾のいくつかを保有し空港やデジタル企業も保有している
米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチが1月24日、創業者一族がモーリシャス諸島の企業を通じて株価を操作しているという報告書を発表した
アダニ氏の純資産は一週間で約40%も減少し、グループ企業の公募増資の計画を取りやめ社債の利回りは19%まで跳ね上がった
ゴータム・アダニ会長は先週まで世界3位の富豪で「インドのロックフェラー」を名乗り、資産は30兆円を超えていたといわれている
アダニ会長はモディ首相と数十年に及ぶ関係があり、モディ首相が知事を務めていたグジャラート州でアダニグループは創業していた
モディ首相は強力な産業界を育成しインフラを整備して経済成長しようとしているが、その過程でこうした腐敗も急速に拡大した
インドはカースト制が今も根付いていて競争原理ではなくコネや縁故で政府契約が決まる傾向があり、政府が最初に勝者を決めて優遇する
勝者は日本のスズキだったり韓国のサムスンや台湾のホンハイ、インドのタタだったり強力な縁故を作ると巨大な市場を独占できる
こうした国では腐敗も急速に進むので特定の巨大企業による株価操作や資産・債務残高を見栄え良く飾ることもするでしょう
ヒンデンブルグ・リサーチの報告書はアダニグループの不正会計も指摘していて、「恥知らずな株価操作と不正会計」と辛らつに批判している
ヒンデンブルグ・リサーチは2020年に新興EVメーカーのニコラに実態がないと糾弾し、その後二コラ創業者は詐欺で起訴された
ニコラはネットでEV計画を発表して”第二のテスラ”として巨額資金を集めたが実際にはEVを開発や発売する能力がなかったと言われている
インド版サブプライムショック
アダニグループに巨額資金を提供してきたのは欧米投資家で、最近の負債の50%は外貨建て債券となっている
外国投資家はアダニ・グループの株式を売却し社債の購入を見送り、クレディ・スイス・グループや米シティグループはアダニへの投資を公式に拒否している
不正会計疑惑はグループ全体の財務状況に疑惑を抱かせ、ひいてはインド全体の経済や投資への疑問を抱かせている
アダニ・グループは新空港や製鉄所建設などに500億ドル以上を必要としているが、資金調達に失敗し建設が放棄されたり遅れる可能性がある
インドは多くの点で中国と似ていて、言論の自由が少なく政府を批判するメディアは厳しく取り締まり「沈黙のメディア」になっている
不正を監査したり告発する機会はなく、今回もアメリカの投資会社が告発するまで皆黙っていました
知らなかった訳ではなく日本の五輪談合と同じで「全員が不正を知っていたが誰も発言しなかった」と思われ、腐敗が深刻化していた
アメリカでは2007年に後に世界経済危機を引き起こすサブプライムショックが発生し、ホームレスやキューバ難民に無審査無担保で数千万円を融資していた
皆それを知っていたがビルクリントンが始めた政策なので誰も指摘できず問題が拡大、ついにアメリカを破産寸前まで追い込む問題に発展した
国中の全員が不正を知っているのに誰も発言しないような状況になると、その国はもう救いがたいほど腐敗している